警察は大手マスコミでも強制捜査するか 鹿児島県警に家宅捜索されたウェブメディア「弱小は捜索し告発者を逮捕。容認できぬ」

2025/03/24 11:55
出版会見を開く「ハンター」の中願寺純則代表。取材活動に影響があるとして、素顔は明かしていない=2024年11月、鹿児島県庁
出版会見を開く「ハンター」の中願寺純則代表。取材活動に影響があるとして、素顔は明かしていない=2024年11月、鹿児島県庁
 鹿児島県警の情報漏えい事件を巡り、県警は福岡市のウェブメディアを家宅捜索した。取材活動に従事する記者にとって、「取材源の秘匿」は堅守すべき鉄則であり、それを脅かす事態となっている。警察権力の暴走か適正な捜査か-。連載「検証 鹿児島県警」の第3部は、一連の経緯や海外の事例を通し、メディア捜索の是非を考える。(連載・検証 鹿児島県警第3部「メディア捜索の波紋」②より)

 鹿児島県警の内部資料を入手して報じ、家宅捜索を受けたウェブメディア「ハンター」(福岡市)は2011年3月に活動を始めた。中願寺純則代表(65)の他、同業の記者数人の記事を主にインターネット上で発信している。

 鹿児島県警の不祥事に関する記事は少なくとも60本以上あり、一部を24年10月に書籍化した。刊行に当たり、県庁で11月に会見した中願寺氏は「全て、弱い側に立った記事しか出さない。公平公正を失っていると言われるかもしれないが、それで構わない。被害者の言い分を完全に信じて報じてきた」と言い切った。

 家宅捜索について、中願寺氏は署名記事で「大組織に属さない存在だからこそ、躊躇(ちゅうちょ)なく強制捜査したとしか思えない」と主張。過去に、大手紙が捜査情報を社外に誤送信したものの強制捜査されなかったとみられる事例を持ち出し、「弱小メディアには捜索した上、告発者を逮捕した。容認できない」と批判する。

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 近年、インターネット環境の発展に伴い、メディアは多様化した。

 そもそも、メディアとは英語で「媒体」という意味がある。日本メディア学会の規約には「新聞・放送・映画・出版・インターネット等」と規定されている。一般的に、不特定多数に向けて情報を伝える媒体はマス(=大衆などの意)メディアと呼ぶ。

 ウェブメディアはインターネットを活用して情報発信する媒体となる。運営形態は多種多様で、規模も大小さまざまだ。発信者の自由度が高いという側面もある。

 「報道機関」はメディアに関する呼称の一つだが、構成要件は明確ではない。法令違反などを告発する際に適用する「公益通報者保護制度」は、外部通報先の一つとして「多数の者に対して事実を知らせる報道機関」と明示するが、その線引きは示していない。

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 県警や報道関係者の中には「ハンターは報道機関か」という議論がくすぶっている。一方の中願寺氏はこれまでに「議論があることは知っているが、好きに言えばよい。記事が全てだ」と語っている。

 日本ペンクラブ会員で、月刊「創」編集長の篠田博之氏(73)は「家宅捜索先が報道機関かウェブメディアかという議論は意味がない」と断じる。報道側に対する「情報源暴き」が問題の本質だと指摘し、「越えてはいけない一線を越えた。極めて乱暴なメディアへの威嚇だ」と憤る。

 メディアの規模にかかわらず、取材活動をする記者を強制捜査したこと自体が「異常事態だ」と強調する。家宅捜索の際に、県警側と中願寺氏とどのようなやり取りがあったのかも追及すべきだとし、「メディア業界全体で批判しなければ、民主主義はむしばまれる」と語気を強めた。

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