「新型コロナ県内初感染者」…〝見えない敵〟との闘いは突然始まった。飛び交う誹謗中傷や誤情報、殺到する問い合わせ…翻弄された職員の苦悩、県とのやり取り克明に 姶良市が記録誌刊行

2025/03/27 11:48
姶良市で県内初の感染者が確認された際の県とのやりとりなどが記された記録誌(画像は一部加工してあります)
姶良市で県内初の感染者が確認された際の県とのやりとりなどが記された記録誌(画像は一部加工してあります)
 5年前の2020年3月26日、鹿児島県内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された姶良市が、コロナ対応の経験と教訓を後世に残そうと記録誌「未曽有の危機を乗り越えて」を刊行した。“見えない敵”に翻弄(ほんろう)される職員の苦悩が垣間見える内容だ。

 感染者が確認された3月26日の記載からは緊迫した様子が伝わる。夜、健康増進課長が姶良保健所から個人の携帯電話番号を聞かれた。「何かあったのかもしれない」。そう思い保健福祉部長らに連絡。その後、午後11時半、三反園訓知事(当時)の緊急会見で「姶良市滞在の女性が感染」と発表。11時55分、県の記者発表資料がファクスで届く。

 直後の27日午前0時に市対策本部を設置。10時に湯元敏浩市長が会見、冷静な対応と予防策の徹底を呼びかけた。同日は市民からの問い合わせが殺到した。

 「感染者の詳しい情報を教えて」「学校行事はどうなるの」「消毒液を配って」など95件。担当者は「県以上の情報がなく非常にもどかしく対応に苦慮した」。

 一方、感染者が立ち寄ったと公表された店からは「来客が途絶え従業員への誹謗(ひぼう)中傷やその子どもへのいじめもあった」と連絡があり、市はホームページで風評被害防止を呼びかける。

 1年以上たった21年になってもさまざまな苦労が続いた。とりわけ、ワクチン接種は情報が錯綜(さくそう)し方針変更に揺れた。「接種開始に向けた医療機関との調整、接種表の送付など、土日祝日に関係なく業務は夜遅くまで。超過勤務が80時間を超える月が続くこともあった」「国からくる膨大な通知・通達を理解し、専門用語を市民に分かりやすく表現、説明する作業が必要だった。通知内容が毎日のように変わることへの対応にも追われた」

 記録誌は271ページ。主要な経過、感染状況、予算措置・条例改正、各課の取り組みなどの項目があり、市役所情報公開コーナー、市内3図書館で閲覧でき、近くホームページで公開する。

 湯元敏浩市長は「忘れないうちに記録に残すことが重要と考え1年かけて作った。将来、同様の事態が起きたときの参考になれば」と話した。

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