引っ越しのピークを迎え、慌ただしく作業に追われる現場=26日、鹿児島市
新年度を目前に控え、鹿児島県内でも引っ越しがピークを迎えている。今年は、トラック運転手の時間外労働規制の強化に伴う「2024年問題」以降、初めての繁忙期で、業者不足や料金高騰が見受けられる。業界は転居時期の分散を呼びかけたり、鉄道輸送を活用したりと試行錯誤する。
26日、鹿児島市のマンション。短期アルバイトを含む昭和貨物(同市)の作業員3人が家具や家電をトラックに積み込んでいた。業界20年以上という男性運転手は「1日2、3件回る日もある。大雨や強風も関係ないよ」と笑った。
この時期、同社では1日当たり約50件の引っ越しを請け負う。以前は80件を超える日もあったが、近年の人手不足から年々減少。そこへ昨年4月からの残業規制強化が追い打ちをかけた。派遣会社から1日60~70人を雇い、どうにか前年に近い件数をこなす。加納潤一社長(66)は「派遣の費用も3割程度上がっている。せめてこの短期間に集中しなければ」とこぼす。
これまで関西や東海地方は最短翌日到着だったが翌々日に、関東以北は今年からコンテナでの鉄道輸送に切り替えた。運転時間などの削減につながる一方、トラックからコンテナへの積み替えがあるほか、他物資との混在輸送のため時間と手間がかかる。「荷出しと荷入れ間隔が開く」と顧客には事前に理解を求める。
「今年は引っ越し料金を上げざるを得ない」と話すのは、南日本引越センター(鹿児島市)の古木清貴代表取締役(39)。繁忙期は毎年、県内の同業5~6社に応援を依頼し応じてもらっていたが、今年は断られることが多く料金も跳ね上がった。「依頼料はもともと10年前より2~3倍になっていたが、さらに1.5倍になった」と明かす。
全日本トラック協会などのまとめでは、今年は3月15日~4月6日を「特に混雑」と予想し、企業側へ転居時期をずらす「分散引っ越し」を呼びかける。
鹿児島銀行(鹿児島市)では今年、着任期限を例年より10日前後拡大し、4月1日付の場合は16日までとした。さらに平日転居に使える「転勤休暇」の積極的な利用を促す。
ヤマト運輸(東京)によると、業者が見つからなかったり、費用面などで業者利用が難しかったりという理由で、宅配便を活用する動きもある。「固定価格で家電や家具に対応できるサイズがあるほか、時間指定もできる」と担当者。引っ越し業者の代替需要を見込んでいる。
■物流の2024年問題
トラック運転手の時間外労働の上限を年960時間とする規制が24年4月から始まり、輸送力低下が社会問題になるとの懸念から名付けられた。物流業界は長時間労働が常態化しており、規制によって是正が期待できる一方、人手不足の中で1人当たりの労働時間が減るため、これまでより配送に時間がかかったり、配送料が高騰したりする恐れがある。