新総合体育館事業について語る塩田康一知事(税所陸郎撮影)
鹿児島県が鹿児島港本港区のドルフィンポート跡地に計画する新総合体育館は、整備・運営までを含む事業費が基本構想比約2倍の488億円に膨らんだ。県は早ければ県議会6月定例会に約9億円の設計費用を提案する方針。塩田康一知事に現状認識を聞いた。
-整備の意義や事業費の大幅な増額をどう考える。
「現在ある県の体育館と武道館は老朽化しており、県大会などを開くには狭く、県民の皆さまに負担を強いている。一定規模の大会を開催できて、どの地域から来た人も便利に利用できる施設が必要で、必要最小限の規模だ」
「資材価格や人件費の高騰で昨年9月に入札不調となり、事業者への聞き取りや新たな指標、コスト削減策も考慮した推計値が488億円だ。民間事業者への包括発注から従来の個別発注に手法を見直すことで新たに国の交付金を受けられ、基金も活用することで30年間の毎年の一般財源負担額は約10億円になる。安定的な財政運営が可能だ」
-年間10億円の負担額が今後も膨らむ可能性は。
「建設コストは現在400億円強。この部分は上昇する可能性がある。ただ今後、県庁舎や県民交流センターなど年間約16億円の県債償還が終わる。仮に年間5億円増えると、総額で150億円の増加となるが対応可能。総額ではなく毎年の負担額をみてほしい」
-年間10億円というが、あくまで未利用財産の売却益などを積み立てた基金活用を差し引いた額だ。県民の財産を充てる妥当性は。県民からは他の事業に回すべきという声も聞かれる。
「これまでも県庁舎などの大規模施設を整備する際には、家を建てたり車を買ったりする時のように一定の積み立てを活用してきた。新体育館は県民の資産で、通常のお金の使い方だ。他の事業にしわ寄せが出てくる訳ではない」
-事業費の増加で年間収支も2億4600万円赤字と基本構想より悪化している。
「赤字ではなく運営費だ。事業者の聞き取りを基に、コンサートの利用日数などを厳しく見積もったもので、精査すれば変わる」
-7000人規模のコンサート開催を年間12回、国際会議や見本市などを14回とするが本当に見込めるか。
「コンサートなどを企画する専門のプロモーターが試算している。九州南部には需要があり、開業前から営業活動して利用促進に取り組む。体育館はスポーツ利用が7割。残り3割の多目的利用が低いからといって造れないという性質ではない」
-県議会は、事業推進、見直しを求める陳情を3月定例会でいずれも継続審査としたが、知事は設計費用の予算化を表明した。強引との批判もある。
「継続して審査するには、建設費を正確に出さないと議論が深まらない。そのために設計が必要で、県としては予算を計上したい。そこに否定的な意見はなかった。設計費も議会で議論できる。通常の手続きで、強引というのはおかしい」