「アメリカは今だけ良ければいいのか」…トランプ関税 地方の農水産物直撃 日本一の産地悲鳴「最大の輸出国なのに」

2025/04/04 07:00
輸出用養殖ブリの9割を米国向けが占める東町漁協。影響を懸念している=2024年12月、長島町の薄井漁港
輸出用養殖ブリの9割を米国向けが占める東町漁協。影響を懸念している=2024年12月、長島町の薄井漁港
 トランプ米大統領が、輸入自動車の追加関税に続き、全世界からの輸入品への「相互関税」導入を打ち出した。「経営に深刻な影響が出そう」「アメリカは今だけ良ければいいのか」。鹿児島県を含め、北米向け輸出に関わる関係者からは不安や怒りの声が上がった。

 国内人口が減少する中、鹿児島県は基幹産業の農林水産物輸出に力を入れ、2023年度の輸出額は過去最高366億6900万円に上った。県は25年度中の500億円突破を目標に掲げるものの、国・地域別で最大の相手国となる米国の決定が大きな影を落とす。

 米国向け輸出額(23年度170億円)の中でも養殖ブリは6割強を占める。日本一の産地・東町漁協(長島町)の山下伸吾組合長(64)は「関税措置で輸入価格が上がれば米国内の物価も高騰する。米国の外食産業が冷え込めば被害は大きくなる」と警戒する。

 同漁協の年間出荷200万匹のうち輸出は40万匹で、うち米国向けは9割を占める。養殖ブリは米国の外食やスーパーからの引き合いが強い。既に東南アジア向けの割合を増やすなどリスク分散にかじを切った。

 牛肉も主要な輸出産品だ。JA食肉かごしま(鹿児島市)は24年度、JA全農を通してステーキ用として需要の高いロースやヒレを中心に約500トンを輸出した。うち約3割は米国向け。販売事業部の竹下勝久部長(55)は「国内で和牛は嗜好品(しこうひん)扱いで消費は頭打ち。突破口が海外販路だったのに」。

 「荒茶生産量日本一となり、これからだと業界は盛り上がっていた」と怒りをにじませるのは、県茶生産協会の坂元修一郎前会長(69)。米国をはじめ海外の抹茶ブームを受け輸出額は増加傾向で、県も重要品目に据える。「高くても買ってもらえるよう、高品質な商品を作るしかない」と前を向く。

 国別関税では日本が計24%、中国は計54%が課される。志布志港から輸出する県産丸太のうち、91%の36万千立方メートルは中国向けで、中国で加工後、米国に輸出される。県森林組合連合会の野村輝明専務(70)は「中国向け輸出商社の引き合いが木材市場の相場を支えていた。中国が買い控えすれば、単価が下がるのは間違いない」とため息をついた。

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