遅咲きの花を付けた桜に目を細める仙田淳一さん=鹿児島市加治屋町
市民に親しまれる鹿児島市の甲突川河畔の「千本桜」。半世紀前に市民を巻き込んだ環境美化活動をきっかけに今の景観が整えられた。当時、植樹を進めた仙田淳一さん(86)=東京都目黒区=は遅咲きの桜を眺め「末永く市民を楽しませてほしい」と目を細める。
仙田さんによると、当時の甲突川は生活排水が流れ込み、大きなごみが捨てられるなどして汚れていた。見かねた鹿児島青年会議所(JC)が1975(昭和50)年、河川清掃を開始。77年からは桜の植樹を始め3年間で千本に達した。78年に同JC理事長になった仙田さんは「クリーン・アンド・グリーン」をスローガンに掲げ運動を進めた。
「川底に自転車が埋まっているなど、ひどかった。市の中心を流れる川がきれいになり輝けば、街の魅力をアピールできる」と狙いを語る。ちょうど鹿児島市が「グリーンストーム作戦」として都市緑化を進めていた時期で、行政の協力も得られた。清掃の後には「川祭り」を開き、市民の関心を集める工夫もした。植樹の翌年には花見客でにぎわうようになったという。
ただ、半世紀近くたち老木化や病害虫被害でいまや500本以下。市は本年度再生プロジェクトを策定し2026~31年度に再整備する計画を進めている。
5年前に東京に転居した仙田さんだが、帰省のたびに甲突川河畔に足を運び、底まで見える清流を感慨深く眺める。