骨髄バンクの取り組みについて上司と語り合う、ドナー経験者の千竈あゆみさん(右)
白血病など血液疾患で移植が必要な患者と、造血幹細胞を提供するドナーをつなぐ「骨髄バンク」。ドナー登録できるのは18~54歳で、働く人が多い世代だ。提供時には入院や検査などで仕事を休まねばならず、職場の理解が欠かせない。ドナー支援の助成制度が全国で広がっており、県も2024年度から本人と勤務先への助成を始めた。
「誰かの役に立てて良かった」。鹿児島市の牛の繁殖、採卵業務を担う「キャトルクリニックRun」で働く千竈あゆみさん(37)は2023年7月、骨髄を県外の患者へ提供した。約10年前に登録していたという。
採取するための入院や事後観察などで計6日間の休暇を取得。その他、事前協議や検査で2~3日費やし、提供のために10日ほど要した。
千竈さんは「一番必要なのは会社の理解」と語る。「仕事のスケジュールを前倒しし、休みをもらった。自分のペースでできる仕事だからできた」と振り返る。同社の山口浩代表(63)は「本人の気持ちを応援した」とする一方、「3人という小さな組織だからできた。企業では特別な休暇制度のない場合は、まとまった休みを取るのは難しいのでは」と話した。
ドナー本人や事業所側の負担を軽減するために県が始めたのは、ドナーや事業所へ独自に助成を行う市町村に向けた支援だ。7日を上限に2分の1以内を補助する。
県内では3市1町が制度を設ける。鹿児島市は22年4月からドナーを対象に始め、25年度から事業所にも拡大する。24年度に始めた霧島市と日置市はドナーのみ、錦江町はドナーと事業所を対象にする。それぞれドナーには骨髄などの提供に要した日数ごとに2万円、事業所には1万円を支給する。日数の上限は自治体で異なる。
日本骨髄バンクによると、24年4月~今年1月で県内居住者でドナーになった人は14人。県の助成への初年度申請は日置市2件、鹿児島市6件を予定する。
県薬務課が23年度、市町村に実施したアンケートでは、県の補助があれば助成制度を創設する可能性があると答えた自治体は16に上った。かごしま骨髄バンク推進連絡会議の大田耕一郎事務局長(71)は「提供を待つ人はたくさんいる。ドナーの負担を減らし、登録者の増加ためにも制度が広がってほしい」と話す。
◇移植待つ患者は全国に2000人
日本骨髄バンクによると2月末現在、ドナーとして全国で56万2662人が登録している。ドナーは年齢制限があり、55歳を過ぎると登録が抹消される。少子高齢化が進む中、10年以内に約40%のドナー減少が見込まれるという。鹿児島県内でも登録者4863人のうち、40~50代が約6割を占める。
全国で移植を待つ患者は約2000人。移植には白血球の型が一致する必要があり、非血縁者間では数百~数万分の一とされる。そのため1人でも多くの登録者が必要だ。かごしま骨髄バンク推進連絡会議の大田事務局長は「ドナーバンクは生きる希望になる。特に若い世代に関心を持ってほしい」と願う。
◇2ミリリットルの採血で登録
骨髄バンクのドナー登録は窓口で申込書を記入後、白血球の型を調べる検査をして完了となる。検査は約2ミリリットルの採血で済む。費用はかからず、県内でも鹿児島市の献血プラザかもいけクロスや献血ルーム天文館、同市と伊集院、大口を除く各地の保健所で登録できる(保健所は要予約)。