「ブラック職場」と言われるのになぜ? 新人先生たちの動機から見えた、教員不足解消のヒント

2025/04/08 11:50
地頭所恵教育長から代表で辞令を受け取る新規採用教諭=1日、鹿児島市のカクイックス交流センター
地頭所恵教育長から代表で辞令を受け取る新規採用教諭=1日、鹿児島市のカクイックス交流センター
 あなたは、どうして先生に?。鹿児島県内の公立学校では今春、新規採用約540人が教職員としてスタートを切った。教員不足が深刻な中、どうすれば担い手を確保し続けられるのか。1日の辞令交付式に臨んだ新人たちに志望動機を聞くと、ヒントが見えてきた。

 「恩師に憧れたから」。会場で多く聞かれた声だ。

 高山中学校(肝付町)で保健体育を担う西丸知良さん(23)が教師を志す契機となったのは、柔道を続けるかどうか迷っていた中学時代、指導者がくれた「前途洋々」の言葉だ。目の前の霧が晴れ、将来に希望が持てた。「時には子どもの前に立ち、隣に座って一緒に考え、後ろからも支えられる先生になりたい」と力を込める。

 西紫原小(鹿児島市)に赴任した盛友愛さん(22)も、小学時代に出会った先生のおかげで学校が好きになった。ニュースで長時間労働など「ブラック職場」と聞いて不安を感じていたが、看護師の母親から「どの仕事も大変だよ。大丈夫」と背中を押された。「児童に『授業が楽しい』と言ってもらえるような先生になりたい」と話した。

 一方、事務職員として勤務する男性(22)は、当初は教員を目指していたが、多忙なイメージから切り替えた。2024年度、県教委による教職員の懲戒処分が最多の28件となったことが気がかりだという。「学校現場で働く当事者として、悪い印象を変えていきたい」

 教員の「心の病」も対応が急務だ。23年度、精神疾患で休職した、全国の公立学校の教員は過去最多の7119人。鹿児島県でも97人に上り、業務の多忙化が背景にあると指摘される。新卒で県内の小学校に赴任した女性教諭(22)は、教育実習で、授業の準備や保護者対応に追われる先輩たちの姿を見た。「働き方改革が、より一層進んでほしい」と望む。

 採用試験の倍率も右肩下がり。県内の小学校教諭でみると、13年度の11.3倍から25年度は1.3倍にまで落ちた。特別支援学級の増加で採用者数が増えた一方で、新卒の受験者数は減少。「予備軍」だった臨時的任用教員(臨時教員)の採用が進んだことも背景にある。

 約10年の臨時教員を経て正規となった深田朋恵さん(45)=開聞中(指宿市)=は、採用試験の年齢制限引き上げなどに門戸が広がった印象を受け、一歩を踏み出す決意をした。

 種子島に夫と2人の子を残して単身赴任となるが「家族の理解のおかげで長年の夢がかなった」と喜ぶ。「先生に興味がある人に、学校を見てもらう機会を増やしたらいい。子どもの成長に関われるすてきな職業だと分かってもらえるはず」と提案した。

 入来小(薩摩川内市)に配属された東屋敷朋美さん(47)は、家庭の事情で一度教職を離れたが、7年のブランクを経て、再び教壇に立つ。鹿児島大学が開く「学校教育キャッチアップ講座」の1期生。「ブランクが空いて不安だったので、飛びつくように受講した」

 復帰したのは教師が一生成長し続けられる仕事だと思えたからだ。「子どもの良さを引き出して伸ばしていける先生になりたい」と抱負を述べた。

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