中学校の花壇から出た…「国内最古級の石橋」 側面に天正8(1580)年の刻銘 日置市伊集院

2025/04/10 14:57
「天正八年」の刻銘が残る石桁橋(左)=9日、日置市の伊集院中学校
「天正八年」の刻銘が残る石桁橋(左)=9日、日置市の伊集院中学校
 天正8(1580)年の刻銘がある石桁(いしけた)橋が、鹿児島県日置市の伊集院中学校で見つかった。緩やかなアーチ状に成形された一枚岩で、近くにあった島津義久の母の菩提(ぼだい)寺「雪窓院」前の小川に架かっていたとみられる。日置市教育委員会の下小牧潤主査は「琉球王朝下の石造文化が残る沖縄を除き、国内最古級の石橋で九州では最古とみられる」としている。9日、市が発表した。

 石橋は、同校正門近くの「美(うるわ)しき魂」碑の花壇に上部だけ見える形で埋設されており、長さ225センチ、幅70センチ、厚さ20センチ。今年3月、市教委社会教育課が生徒14人と周囲の土を除去して調査、側面に「天正八年庚辰三月吉日」「宗的寄進」の刻銘を発見した。「県史跡名勝天然記念物調査報告書」(1929年)にある「(雪窓院の石橋は)側面に『天正八年宗的寄進』の八字を刻す」の記載とほぼ一致。宗的は人名と思われる。

 3次元計測などの結果、上部は両側面が高く、中央がへこんで摩滅や擦痕(さっこん)が確認され、人の往来で長期的に使われたとみられる。

 雪窓院は1567年建立、1869年に廃仏毀釈(きしゃく)で取り壊された。江戸後期の「三国名勝図会」には寺院前に複数の橋が描かれている。「伊集院郷土史」によると、橋の一つが周辺の下水改良工事に伴い同校の碑に転用された。碑は1968年ごろ建立されている。

 石橋は石桁橋、石刎(いしはね)橋、アーチ橋に大別される。石桁橋では甲斐市(山梨県)に永禄4(1561)年の刻銘のある旧竜王河原宿石橋などがある。アーチ橋では長崎市にある1634年架設の長崎眼鏡橋が現存する最古のものとされる。

 調査に協力した鹿児島国際大学の中園聡教授(考古学)は「長崎眼鏡橋とは系統の異なる古い形式だが、年号がはっきりと刻まれ、九州で展開する石橋文化を調べる基準資料となる」としている。

 現地説明会が12日午前10時から開かれる。

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