愛用のカメラを手にするやまぐちめぐみさん=霧島市牧園のJR霧島温泉駅
鹿児島県霧島市牧園町のJR霧島温泉駅で、近くに住む写真家やまぐちめぐみさん(46)の個展が開かれている。2年前に判明したがんと闘いながら、日常の風景を撮り下ろした。「見てくれた人が癒やされ、笑顔になってくれたら」と願う。30日まで。
鹿児島市出身。松陽高校美術科から窯元の絵付け師を経て、20歳で同市の写真スタジオに入り、写真家の道へ。南日本写真展での受賞も多数あり、2009年に悪石島の「ボゼ祭り」を活写した写真集を刊行した。22年にフリーになり、写真教室を開くなど幅広く活動していた。
23年3月、希少がんの一種、後腹膜肉腫と診断された。年間発生率が10万人当たり6例未満の珍しいがん。3度の手術と抗がん剤治療を重ねた。しかし、抗がん剤の副作用による体の痛みと苦しさで寝込む毎日。「自分らしく生きられる時間を送ろう」と今年2月、投薬中止を決めた。
会場は長男の優太さん(17)が通学で使う駅を選んだ。展示するのは、15センチ角から六つ切りまで、カラフルな椅子が並ぶ駅のホームや夕景、白い霧に包まれた幻想的な森など多彩な33点。愛機のミラーレスカメラで、牧園の暮らしの中で見つけた幸せな瞬間を切り取った。
個展初日の4日は、やまぐちさんの46回目の誕生日。夫宏二郎さん(55)や神奈川県に暮らす長女優楽さん(20)も駆けつけた。「写真の魅力は思い出や感動を残せること」と語るやまぐちさん。「写真家としての母の姿を子どもに見せたい」と、撮りためた作品の展示にも意欲を見せる。「やりたいことをやらなくちゃ」と明るく笑った。