小型船が接岸予定だった浮桟橋を視察し、記念撮影するクルーら=15日、指宿市の山川漁港
鹿児島県指宿市の山川漁港への寄港を予定していた商船三井クルーズ(東京)の「三井オーシャンフジ」(3万2477トン)は15日、現地の強風や波の高さを考慮し、鹿児島市のマリンポートかごしまに寄港先を変更した。初のクルーズ船受け入れで盛り上がっていた関係者は「来年こそ」と口をそろえた。
船は沖合に停泊し、ツアー希望の約140人が小型船に乗り換え、浮桟橋から上陸する段取りだった。
山川町漁業協同組合は税関検査用のブース整備などを進めてきたが、寄港中止を受け撤去した。午後にはクルーズ船の乗員が漁港や浮桟橋を訪れ、出迎えた同漁協や山川水産加工業協同組合の関係者が花束や茶節のカップスープを贈った。
山川町漁協の鮫島祐藏組合長は「漁港でクルーズ船を受け入れる先例としての期待があっただけに残念」。寄港が決まってからの約1年を振り返り「今回は手探りだったが、手順は分かった。次に生かせれば」と手応えを語った。
南薩地域は、クルーズ船が多く入る鹿児島港からの移動に往復2~4時間かかり、滞在の短い乗船客が回遊するのは難しかった。山川漁港に寄港できれば南薩はもちろん、指宿市とフェリーで結ぶ南大隅町の佐多岬なども観光圏に入る。
南薩と大隅半島4市2町は歓迎式典で記念盾を贈る計画だった。指宿市の山下浩二観光課長は「他自治体と連携し、広域観光をPRするいい機会だった。クルーズ船誘致に力を入れていきたい」と話した。
15年前から寄港を目指してきた共進組(鹿児島市)船舶代理店部の黒木猛部長代理は「漁協の皆さんとようやくつかんだ1隻だった。来年こそは実現させたい」と力を込めた。
商船三井クルーズによると、オーシャンフジは来年4月、山川漁港寄港を予定する。