感じられなかった…水俣病解決への熱意 浅尾環境相が被害者団体と懇談 マイク切り問題はわびたが、健康調査巡り対立し溝埋まらず

2025/05/01 06:03
共同要求書を浅尾慶一郎環境相(手前左)に提出する水俣病被害者・支援者連絡会の山下善寛代表代行=30日、熊本県水俣市の水俣病情報センター
共同要求書を浅尾慶一郎環境相(手前左)に提出する水俣病被害者・支援者連絡会の山下善寛代表代行=30日、熊本県水俣市の水俣病情報センター
 熊本県水俣市で5月1日にある水俣病犠牲者慰霊式に合わせ、浅尾慶一郎環境相は4月30日、同市を訪れ、被害者団体と懇談した。環境省が団体側の発言中にマイクの音声を切った問題から1年。浅尾氏は「十分な時間を取る」と2日間の日程で臨んだが、初日は認定基準制度や住民健康調査を巡り被害者側の要望に応える場面はなく、両者の溝は埋まらなかった。

 同市の水俣病情報センターで開かれた懇談会には6団体が出席。浅尾氏は冒頭、マイク切りを「不適切だった」と改めて謝罪した。

 水俣病特別措置法に基づく健康調査で、脳磁計とMRIを組み合わせた手法の見直しを求める団体側に対し、浅尾氏は「専門的知見から適切という意見がある。疫学調査の精度を高めるもの」と譲らなかった。

 水俣病被害者・支援者連絡会の山下善寛代表代行(84)は懇談後、「公式確認から69年の重みが分かっていない。水俣病を解決しようという思いや熱意が感じられなかった」と嘆いた。

 浅尾氏は30日午後、水俣市入りし、認定患者のいる4施設と患者宅を訪問した。補償の見直しを訴える患者から要望書を受け取ったり、家族に患者の生い立ちや窮状を聞いたりした。胎児性患者の長井勇さん(68)=出水市出身=は、共同作業所で懇談し「胎児性の子を産んだ母親が、どうして患者認定されなかったのか」と母の無念を訴えた。

 浅尾氏は1日、水俣病被害者獅子島の会などと懇談し、水俣病犠牲者慰霊式に出席する。

◇浅尾環境相「現行法の丁寧な運用で対応」

 浅尾慶一郎環境相は30日にあった水俣病患者・被害者団体との懇談会終了後、報道陣の取材に「公健法(公害健康補償法)の丁寧な運用で対応していくのが大事」と繰り返し、従来通り現行法の範囲内で対応する姿勢を崩さなかった。

 マイク切り問題を受け、昨年始まった実務者協議について「患者の医療福祉の充実では一致できる。鍼灸マッサージや患者の外出支援など新しい取り組みができる」と成果を強調。「意見交換し、結論が出るところについては進めていく。できる支援はしていく」と話した。

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