水俣病マイクオフ問題、環境相「シナリオあったと認識していない」 職員「あったのは事実」…1年経っても議論かみ合わず

2025/05/01 11:30
被害の現状を訴える水俣病不知火患者会のメンバー=30日、熊本県水俣市の水俣病情報センター
被害の現状を訴える水俣病不知火患者会のメンバー=30日、熊本県水俣市の水俣病情報センター
 水俣病患者・被害者団体と環境相との2日間に渡る懇談が熊本県水俣市で始まった。初日の30日は2時間半の予定が3時間を超えた。水俣病の認定制度や健康調査の在り方について、浅尾慶一郎環境相は「現行法の丁寧な運用を続ける」と従来の説明を繰り返した。事実上のゼロ回答に団体からは「水俣病を解決しようという熱意が感じられない」と憤った。

 議論は前半からかみ合わなかった。「なぜマイクの音声を切るシナリオを用意したのか」。昨年の懇談で環境省が団体側の発言を遮った問題について、水俣病被害者の会の中山裕二事務局長(71)が尋ねた。

 浅尾氏は「私はシナリオにしたと認識していない」と否定。直後に環境省職員が「シナリオが数年前からあったのは事実。水俣病の歴史と経緯への認識が欠けていたことを反省しなければならない」と釈明した。

 浅尾氏は、団体側が問題視する水俣病の認定制度に関して、「最高裁判決は従来の判断条件を否定していない。総合的な検討を丁寧に行っており、見直す考えはない」とこれまでの見解を繰り返した。

 両親が認定患者で、現在も認定を巡る訴訟を闘う佐藤英樹さん(70)=水俣市=は「水俣病は終わったと思っている。私たちをニセ患者だと思っているようにしか見えない」と憤った。

 環境省が計画する脳磁計・MRIを使った健康調査に対して、団体側は「被害の広がりが分からない」と反対している。調査の目的について浅尾氏は「被害を前提に調べるわけではない。調査の結果として被害があるかもしれないし、ないかもしれない」と述べた。

 懇談終盤、会場からは「ペーパーを読み上げず自分の気持ちで答えてください」との声も飛んだ。

 水俣病特別措置法に基づく救済を受けられず、国などに損害賠償を求めて提訴している水俣病不知火患者会の村山悦三さん(79)=出水市=は「もっと大臣自身の声が聞きたかった」。

 50年以上支援を続ける水俣病被害者互助会の谷洋一さん(76)は「水俣病を解決しようという思いが感じられなかった。救済の入り口にも立っていない」と嘆いた。

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