工事が中断されている自衛隊宿舎建設現場=2日、西之表市西之表
鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地整備に絡み、同市の下西校区に新設される計画だった隊員宿舎が、地中から大量の廃棄物が出たために工事中断となってから5月で半年がたった。防衛省と市は2日までに南日本新聞の取材に対し今後については「調整中」と回答。工事再開のめどは立っていない。進展のない状況に住民からは「ほかの場所に移るのではないか」「説明してほしい」と不満の声が漏れる。
2日、建設地を訪ねると、基礎工事の足場が組まれたまま留め置かれていた。下西小学校から約700メートル離れた丘陵地。工事関係者や住民の人影もなく、廃棄物を覆うように各所にブルーシートが掛かっていた。
宿舎は10階建て1棟、97戸分を計画する。2024年3月に工事契約がなされたが、着工後に古タイヤや空き瓶、人の頭の大きさ程度の石が出土したため同11月1日から中断している。
「いつ再開するのか、それとも中止なのか、全く分からない」。下西校区の榎本善行校区長(61)はやきもきする。この半年間、同省や市から方針の説明はない。住民の間では「ここでの建設は無理だろう」「市外に移るのでは」といった臆測が飛び交っている。
工事が再開されればトラックの往来が増え、児童の通学に気を配る必要もあり、影響は小さくない。隊員や家族の地域行事参加に期待する声もある中、榎本校区長は「説明なく中断が長引けば不信感につながりかねない。状況を随時知らせてほしい」と注文する。
同市商工会の伊達昭博会長(61)は、今後の進ちょくについて、現在の建設地で廃棄物を処分するか、代替地を用意するかの二択ではないかと推測する。「今は見守るしかないが、早く方針を決めて工事を進め、地域のにぎわい創出につなげてほしい」と求めた。
建設地は元市有地の7029平方メートル。1960年代にごみ処理場だったとされる場所で、防衛省と市は2022年11月に売買契約を結んだ。同省は「候補地を市に求め、市側から適地として提示され購入した」との立場。一方の市は「複数の候補地から防衛省が選定したと認識している。市が選定した事実はない」「旧塵芥処理場と説明した」と主張する。両者の見解は異なり、責任の所在は今も不明確となっている。