九州電力川内原子力発電所の1号機(左)と2号機=薩摩川内市
九州電力は19日、新たな原子力発電所の建設を検討すると発表した。既存の原発より安全性を高めた次世代革新炉の開発と設置を社内で検討する方針を、2035年度までのグループ経営ビジョンに初めて盛り込んだ。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の敷地も対象になる可能性がある。九電は「建設場所など具体的に決まったものはない」と説明している。
原発の新増設を巡っては、川内原発3号機の増設を10年11月に県知事が同意。11年3月の福島第1原発事故を受けて手続き凍結を表明し、増設計画は停止している。
政府が今年2月に改定したエネルギー基本計画では、同じ電力会社であれば廃炉作業中の原発とは別の原発敷地内で、次世代革新炉に建て替えることを容認。九電の場合、玄海原発(佐賀県)の廃炉分を川内原発に建て替えることが可能になった。
九電は南日本新聞の取材に、21年4月に発表した脱炭素化に向けた50年までの計画の中にも「次世代革新炉の検討を盛り込んでいる」と説明。現時点で建て替えやその場所は決まっておらず、「新しいフェーズ(段階)には入っていない」とした。
新たな経営ビジョンには、発生する温室効果ガス以上の分量を削減する「カーボンマイナス」の取り組みとして、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置の検討」を明記した。前回19年に策定したビジョンは「(既存の)原子力を最大限活用」としていたが、国のエネ基に合わせて原発の新増設に向け、一歩踏み出した形となった。