尾辻朋実氏の紹介もされた連合鹿児島のメーデー県中央集会=4月29日、鹿児島市浜町のかんまちあ
7月20日が有力視される参院選の投開票まで20日で2カ月となった。鹿児島選挙区(改選数1)は、自民党の尾辻秀久参院議員(84)が勇退を決め「現職不在」の選挙戦。政治とカネ問題や物価高対策への不満など、石破政権への逆風が吹き荒れる中、野党にとっては「反自民」でまとまる好機と言えるが、無所属で立憲民主党が推す秀久氏の三女・尾辻朋実氏(44)を巡る共闘の足並みはそろっていない。「このままでは自民を利することになりかねない」と関係者からは懸念も聞かれる。
自民公認候補の公募に漏れた尾辻氏は誘いを受け今年1月、立民に入党した。立民は、父秀久氏の保守票を狙える期待もあり「公認並みの推薦」を決定。大串博志代表代行は全国32ある改選1人区が勝敗の鍵を握るとし「鹿児島は重要選挙区だ」と強調する。
立民の最大の支持組織である連合鹿児島も3月、尾辻氏の推薦を表明。野党系組織「5者会議」では、県議会会派・県民連合、国民民主、社民の両党の県組織も連合鹿児島の方針を尊重して対応すると決めた。
ただ内情は共闘とはかけ離れた状況だ。
尾辻氏を「応援しない」と決定した国民県連。三反園輝男代表代行は「UAゼンセン(流通業などの産業別労働組合)など国民の支援組織はそれぞれの比例候補の当選に向け活動する」と話す一方、選挙区は各組織に委ね静観の構えを見せる。「野党間で議論を重ねた後の擁立なら、もう少し違う取り組みがあったかもしれない」と打ち明ける。
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社民も尾辻氏が自民の公募に手を挙げたことを不安視する声が根強く、協議が難航。党本部の承認を必要としない「支援」にとどめた。社民県連の川路孝代表は「野党がまとまりきれず、票が割れないだろうか」と危惧する。
16日には共産党が元県議の松崎真琴氏(67)の擁立を発表。前回22年の参院選では、共産が候補擁立を取り下げ、立民と社民を含む野党3党の県組織が立民新人の候補に一本化した経緯がある。ただ今回は「難しい」とする。党県委員会の米重均副委員長は「共闘を模索してきたが、物価高、基地、原発問題など尾辻氏の政策に合意できる部分はない」と言い切る。
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「鹿児島はもはや野党共闘だけでは勝てない」。連合鹿児島の下町和三会長は指摘する。前回参院選で立民新人が自民現職に10万票以上の差を付けられたことを踏まえ「だからこそ幅広い票を期待できる尾辻さんは面白い」とみる。
19日、尾辻氏を激励に訪れた立民の小沢一郎衆院議員。野党共闘が不調な現状を問われると「それはまだ分からない。これからだ。今はとにかく皆で尾辻さんを応援しようという気持ち一つでいい」と含みを持たせた。
鹿児島選挙区ではほかに自民党が公認する元参院議員園田修光氏(68)、参政党が公認する医師牧野俊一氏(39)が立候補を表明している。