「一人一人の命を大切にしてほしいとの願いを込めた。親子で聞きにきてほしい」と話す桂竹丸=鹿児島市の南日本新聞社
鹿児島県鹿屋市出身の落語家桂竹丸(68)が戦後80年特別企画として、特攻をテーマにした創作落語「特攻セズ」を6月28日、鹿児島市の川商ホールで上演する。取り上げたのは太平洋戦争末期、特攻作戦に異議を唱え、異例の別行動を許された旧海軍航空隊「芙蓉(ふよう)部隊」を率いた美濃部正少佐(当時)。竹丸は「あの時代に自らの信念を貫いた、筋の通った人がいたことをもっと知ってほしい。語り部の一人として戦争の怖さを伝えていきたい」と訴える。
部隊は1945年1月、静岡県で結成後、3月末に鹿屋に移転。5月には曽於市岩川に移り、終戦まで沖縄方面への夜間攻撃を続けた。特攻を決める作戦会議で、美濃部少佐は上層部を前に「特攻が、わが部隊より戦果を挙げるとは思えない」と訴えたという。
竹丸は「おかしいと思ってもそう言えない時代において“空気の読めない人”だった。黙っている方が楽という空気の中で信念をもって行動する点が、西郷隆盛にも似ているのでは」と持論を語る。
戦争を扱う創作落語は、知覧の「特攻の母」鳥浜トメさんを扱った「ホタルの母」に続き2作目。近所に防空壕(ごう)があり、親類からも戦争体験を聞いて育ったが芙蓉部隊は知らなかった。約10年前、落語会に来ていた岩川出身の客に教えられ創作を決め、2017年に初披露。その後も部隊や地元の関係者に話を聞いたり、関連本に当たったりと取材を重ねた。今回は美濃部少佐の人柄や生きざまがより伝わるように台本を練り直して臨む。
「芙蓉部隊について作品を残すことは地元出身者の使命。一人一人の命を大切にしないといけないとのメッセージを込めた」と強調。「普通に暮らせることが、どれだけぜいたくなことなのか。戦争って嫌だなと感じてほしい。ぜひ親子で足を運んで」と呼びかけた。
午後2時開演。全席自由、一般4000円、高校生以下2000円。未就学児入場不可。山形屋、十字屋クロス、チケットぴあなどで販売中。鹿児島音協=099(226)3465。