経営再建目指す山形屋、事業再生ADR始動から1年「2年目は結果出す」…金融関係者からは「前倒しぐらいの勢いないと」の指摘も

2025/05/27 11:05
山形屋=26日、鹿児島市金生町
山形屋=26日、鹿児島市金生町
 私的整理の一種「事業再生ADR」による経営再建を目指す山形屋(鹿児島市)は28日、事業再生計画の始動から1年を迎える。不動産売却や組織・人員体制のスリム化を柱とする5年間の計画。山形屋は「計画浸透に注力した。2年目は結果を出していく」と振り返る一方、専門家や金融関係者からは「スピード感が足りない」との指摘もある。

 同社は総額360億円の負債を抱え、2023年末にADRを申請。24年5月28日に債権者の全17金融機関の合意を得て、事業再生計画をスタートさせた。人員のスリム化は自然減で図り、解雇や希望退職は募らず、報酬カットもしない。

 昨年6月、グループ全体の経営戦略を担う山形屋ホールディングス(HD)を設立。経営陣にメインバンクの鹿児島銀行(鹿児島市)と九州経済研究所(KER、同市)、ファンド運営企業から1人ずつ受け入れ、創業家の岩元純吉氏は代表取締役社長、岩元修士氏は代表権のない取締役として残った。

 HD傘下に入った山形屋の修士社長は「計画の精度は高く、愚直に実行することで再生は達成できる」とコメント。KER出身でHDの中元公明取締役会長は「評価するには時期尚早」と取材に応じていない。

 初年度は資産売却を視野に、サテライトショップや山形屋ストアの一部店舗を閉鎖、卸売業・山形屋商事の来年2月閉業も明らかにした。日南山形屋(日南市)は百貨店業態から撤退しギフトショップとなった。

 ある金融関係者は「山形屋の規模的にも、前倒しで計画を終わらせるくらいの勢いがないと、4年後の目標達成は厳しい」と不安視する。倒産法が専門の一橋大学大学院法学研究科の山本和彦教授は「再建1、2年目は、コスト削減しつつ収入を上げる筋肉質な体質に変えることが求められる。今後、現れる結果をどのように捉え、計画に反映させていくのかが焦点になる」と話した。

 山形屋の売上高は24年2月期で約162億円(変更前の会計基準では約378億円)。5月現在のグループ従業員は1422人。

■事業再生ADR

 過剰債務を抱えた企業の私的整理手続きの一つ。ADRは「裁判外紛争解決手続き」の意味で、裁判所ではなく国が認めた第三者機関が金融機関など債権者の調整役を担う。通常の私的整理と同様に企業は事業を継続でき、早期の事業再生を図れるとされる。

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