県の新総合体育館事業が計画されるドルフィンポート跡地(中央)=鹿児島市、2024年1月、本社チャーター機から撮影
鹿児島県は11日の県議会一般質問で、鹿児島港本港区ドルフィンポート跡地(鹿児島市)に計画する新総合体育館の基本・実施設計を担う事業者を、公募型プロポーザル方式で選ぶ方針を明らかにした。選定過程では県民向けの公開プレゼンテーションも検討しているとした。
新体育館の整備費が膨らみ県民意見が割れる中、設計業者を選ぶ段階でデザイン案などを提示し、透明性を確保する狙いがある。公明党の村野俊作県議(鹿児島市・鹿児島郡区)の質問に桑代毅彦観光・文化スポーツ部長が答えた。
プロポーザル方式では、事前に県側が設定した基準に基づき、提出された技術提案書を評価する。他県の事例や設計事業者からのヒアリングを踏まえ、提案書に要求する内容を公募資料にまとめる。1次提案書では建物の完成予想図を立体的に表した詳細なイメージ図などを求める。設計審査会である程度絞り込んだ後、県民を集めた公開プレゼンを実施する見通し。
他県の県民向け公開プレゼンでは、完成イメージ図などを活用し、寄せられた県民意見を審査の参考にしている例もあるという。桑代氏は「実施方法を検討していきたい」と述べ、施設の維持管理・運営費の低減に向け、設計仕様書や評価基準の検討も進めるとした。
村野氏は建設費用について「いくらになるかで財政運営への影響度合いが決まる。どの程度まで許容されるのか」と、限界点を示すよう訴えた。虫明徹総務部長は「どの程度の建設費であれば財政運営上対応可能か示すのは困難」とした上で、「仮に毎年度の一般財源負担が数億円程度増えても、公債費の中で適切に管理し、持続的で安定的な財政運営を行いたい」と答えた。
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鹿児島県が鹿児島港本港区ドルフィンポート跡地(鹿児島市)に計画する新総合体育館の整備事業を巡る陳情93件が11日、県議会6月定例会で委員会付託された。事業の見直しを求める陳情が61件で6割を超え、全体の約4割は整備の賛否を問う県民投票の実施を要求。体育館整備を求める推進の陳情は32件あった。
一度の委員会に付託される数としては異例。県民の意見が割れている現状が改めて浮き彫りとなり、審査が長引くことが予想される。
付託されたのは2月17日~6月2日に受け付けた陳情。事業の見直しに関する陳情は4月上旬から出され始めた。個人が多く、提出を呼びかけるウェブサイトなどが影響したとみられる。体育館建設は反対しないものの、場所や規模の再検討や、県側と県民の意見交換の場を求める内容が多い。
早期整備など事業推進の陳情は5月下旬に集中。特に締め切りの6月2日や、直前の平日の5月30日に多く、スポーツ団体や商店街の関係者らが提出した。
実際の受理件数は89件だが、陳情項目の内容によって審査する委員会が異なり、付託件数は重複分を含め93件になる。82件は18日の文教観光委員会で審査し、同日に終わらない場合は予備日の20日を充てる見通し。他11件は事業を巡る議論など議会のあり方に関する陳情で、会期中に開く議会運営委員会が審査する。