〈和泊町長選・17日告示〉積極推進した公共事業が財政圧迫 借金返済の割合は県内ワースト 30億円の新アリーナ争点に

2025/06/14 15:00
約17億円の事業費で2019年に整備された役場=和泊町和泊
約17億円の事業費で2019年に整備された役場=和泊町和泊
 任期満了に伴う和泊町長選は17日告示される。町が積極的に進めてきた公共事業が負担となり、町財政は厳しい。前回の町長選前に策定された町総合振興計画に構想が盛り込まれる総合交流施設(アリーナ)に注目が集まっている。必要か、否か。町は賛否に揺れている。

 タラソテラピー(海洋療法)の海水プールやジムを備える「タラソおきのえらぶ」。町が2005年に約11億円掛けて整備した。町民の健康増進に寄与するが、運営は赤字が続く。

 これ以外にも町は、他自治体に先駆けて公共下水道を整備したり、独自に運営する有線テレビのデジタル化を進めたりしてきた。19年には約17億円で新庁舎も整備。ある町職員は「小さな町だが、公共サービスや農業基盤は充実している」と胸を張る。

 一方で、整備費や維持費は財政の重荷になっており、23年度末の町債残高は約77億円。財政規模に占める借金返済の割合を示す「実質公債費比率」は16.6%で、県内ワーストだ。

 17年に解体された町民体育館の代替施設となるアリーナは、総事業費約30億円と見込まれている。立候補を予定する3人の考え方はそれぞれ微妙に異なる。

 現職の前登志朗氏(66)は、前回選挙で反対を訴えた。就任後は協議を継続してきたが、5月に「造らない」と表明した。役場OBで行政書士の種子島公彦氏(63)は「白紙からの検討」を掲げる。ただ「将来的には必要」との立場。医師の川間公雄氏(67)は、将来の負担を増やすべきではないとして「計画中止」を前面に打ち出す。

 元町職員の70代男性は建設を待ち望む。「住民への投資だ。施設がないためにイベントが開催できないことこそが負の遺産」と強調。建設に反対する70代の農家男性は「これまでのように公共事業を進めるのは時代遅れ」と指摘する。

 農業が基幹産業の町の人口は約6000人。公共事業によって町の活性化を目指すのか、将来のために負担を減らすのか。予算が限られる中、町の運営には難しいかじ取りが求められている。

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