400億円を超す県の新体育館計画…賛否巡る陳情は異例の85件――「議論が強引すぎる」「出来レース」 県議会委員会がきょう採決へ

2025/06/20 06:48
新総合体育館整備事業について質疑を交わす委員ら=18日、県議会
新総合体育館整備事業について質疑を交わす委員ら=18日、県議会
 鹿児島県議会文教観光委員会は20日、県が鹿児島港本港区ドルフィンポート跡地に計画する新総合体育館の約9億円に上る設計関連予算議案と、事業への賛否を巡る陳情85件の審査・採決を行う見通しとなった。「血税を使うなら県民投票して」「一刻も早く整備を」-。陳情には多様な意見が記されている。提出した県民は、議会の判断を注視する。

 6月定例会には、新体育館事業の問題点や、陳情の出し方を解説したウェブサイト「鹿児島サバイブ」を参考に、事業の抜本見直しを求める陳情が多く出されている。

 「設計費9億円を簡単に通さないでほしい」。サイトを昨秋立ち上げた発起人の1人で鹿児島市の自営業中村稔彦さん(51)は初めての陳情につづった。「将来の人口減少や財政状況、県が示す経済効果の根拠など議論は尽くされていない。負の遺産を残さないよう問題提起しないといけないと思った」と話す。

 18日の委員会審査のネット中継を見て「出来レースのようだった」と指摘。「体育館の建て直しには反対しない。ただ、賛否を問う県民投票は必要ではないか。県民をもっと議論に巻き込んでほしい」と訴える。

 県民と県政との意見交換の場を望む奄美市の女性会社員(51)は、もともと体育館計画に関心がなかったものの、整備費の高騰を知って驚いたという。高齢の父親の通院で鹿児島市に向かう旅費や、コメなど物価の値上がりに悩む日々。「強引に進めている印象。陳情にもっとしっかり目を通して」と願う。

 プロレスイベントの誘致に携わる薩摩川内市の自営業青崎裕さん(53)は整備の推進を要望した。現在の県体育館は長年、プロレス興行に使われてきた“聖地”。しかし老朽化などで主催者が別会場を選ぶようになり、最近は県内開催を見送る例も増えたという。

 観客席数8000人規模の施設があれば、若者は大都市圏と同様の体験ができ、人口減を食い止められるかもしれない。「建てるからには一人でも多くの人が賛成する建物がいい。議会は議論を強行に進めず、いろいろな角度から話し合ってほしい」と語る。

 鹿児島市商店街連盟の有馬勝正会長も整備を望む1人。陳情は「自発的に出した」とし、「天文館は商業以外の何らかの集客装置が必要。新体育館ができればコンサートやスポーツイベントで人が集まり、中心市街地のにぎやかさは増すはずだ」と期待した。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >