〝昭和の常識〟テレカに脚光…今なぜ? 学芸員のアイデアが当たった、低迷した販売がうなぎのぼり 鹿児島市立美術館

2025/06/22 11:33
防災グッズや子どもの連絡用としてPRされ、販売数が伸びているテレホンカード=鹿児島市城山町の市立美術館
防災グッズや子どもの連絡用としてPRされ、販売数が伸びているテレホンカード=鹿児島市城山町の市立美術館
 鹿児島市立美術館のミュージアムショップで、昭和時代に作られた「テレホンカード」が売れている。公衆電話で使える防災グッズとしての一面や、スマートフォン禁止の学校や携帯電話を持たない児童でも連絡できる点をPRしたところ、1カ月で前年度1年間の1.5倍を売り上げた。PRポップを作った小牟禮雄一学芸員(45)は「携帯が使えない時に備えてテレカを持つことが令和の常識になればうれしい。館所蔵の名品が印刷されアートカードとしても魅力」と話す。

 テレカは公衆電話で使えるプリペイドカード。館が販売するのは500円分(50度数)で価格は500円。図柄は7種類で、アトリエ(黒田清輝)や睡蓮(クロード・モネ)、女の顔(パブロ・ピカソ)など館を代表する所蔵6作品と館の写真がある。

 いずれも1988(昭和63)年~90(平成2)年に館が製作した年代物。当初は年間で千枚以上売れた年もあったが、携帯電話の普及が進んだ2000年以降は売り上げが低迷。22年度はゼロ、23年も12枚、24年11枚と月に1枚ペースだった。しかし、4月末に公衆電話で使える防災グッズとしてアピールし、受付で販売を始めると、1カ月で16枚が売れたという。

 日本公衆電話会鹿児島支部の岩重俊一支部長(77)は「公衆電話からは災害用伝言ダイヤル『171』が優先的につながる。緊急時に備え、普段から電話の設置場所を確認してもらえれば」と話す。NTT西日本鹿児島支店によると、県内にある公衆電話1646台(24年3月末現在)はすべてテレカに対応している。

 昭和、平成、令和と時代が移る中でも、美術館で大切に保管されてきただけあってカードの状態は良好という。自身も購入した小牟禮さんは「在庫がなくなれば、もう手に入らない。館所蔵の名作を財布の片隅に入れて持ち歩いて」と呼びかけている。

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