大学の男子寮に入ってはや１カ月。ようやく楽しいイベントが発生した。それは「女子寮合同新入生歓迎ダンスパーティー」。

　このイベントを発生させるには条件がかなり難しく、冒険者は限られている。

　１、家賃７００円の男子寮という、叫び散らす魔物（先輩）が住むダンジョンに入寮

　２、魔物を見かける度に「こんにちは！」と叫び、喉のレベルを９９にする

　３、寮をやめない－だからだ。

　条件を達成すると、１年生全員が南寮談話室というだだっ広い部屋に２年生から呼び出された。

　「失礼します！こんにちは！こんにちは！」。

　ドアを開けると５人ほどの２年生が待っていた。

　「１年！来週！女子寮で新歓ダンスパーティーが行われる！いいな！」「じょ、女子寮で？よっしゃーーーー！」

　女子寮に入れると聞き、喜びで歓喜の声が上がる。

　「ヘラヘラすんなああ！いいかダンスを今から教えるからしっかり覚えろよ！」

　そこからは２年生が女の子役をやってくれ、手取り足取りダンスを教えてくれた。ダンスは簡単で、小１時間ほどで終わった。１年生はレベルが上がりダンスを覚えた。

　「よし！当日は全員スーツだ！しっかりシャツにアイロン掛けとけよ！」。この頃には２年生がめっちゃ優しいことを１年生全員が知っていた。

　そしてダンスパーティ－当日。１年生はスーツ姿で男子寮の前に一列で、腕を後ろに組み全員並ばされていた。１年生の前には、ダンスパーティーを任された２年生が数名。その後ろに、寮を仕切る９人のズタボロのはっぴを着た役員が腕を組んで立っている。２年生が叫ぶ。

　「いいか！絶対に携帯番号５人は聞いてこいよ！」「はい！」「女子寮の門限は２３時だ！２３時までに女子寮の子に遊ぶ約束を取り付けろ！２３時までに女子寮の外に出て、２３時を過ぎれば、女子は帰れなくなる！つまり、一晩中女子と遊べる口実ができる！意地でも２３時までに誘い出せよ！」「はい！」

　「いいか！もし誘い出せたら、セントラルっていう複合施設に行けよ！ボウリングもできるし、カラオケもついてる！ボウリングをしたら、カラオケがちょっと安くなるから、券もらえるから、先にボウリングをしろよ！」「はい！」

　次に２年生は役員の前に立ち、両手でどんぶりを差し出した。

　「今月で２０歳になりました！よろしくお願いします！」

　そのどんぶりに役員が焼酎を注ぐ。

　「ありがとうございます！いただきます！」

　そういうと２年生はグイっと焼酎を飲み干した。

　「ふう…、よし！いくぞ１年！絶対彼女つくれよ！」「はい！」

　１年生全員、２年生の事を大好きになっていた。２年生の後をついて一列で女子寮に向かう。いよいよダンスパーティーが始まる。

つづく