新総合体育館設計費を含む一般会計補正予算議案などへの反対討論をする岩重仁子議員=26日、県議会
鹿児島県議会は26日、鹿児島港本港区のドルフィンポート跡地に県が計画する新総合体育館の約9億円に上る設計関連予算を可決し、施設の設計に進むことを容認した。共産党と無所属の5人が反対討論に立ち「設計費を認めていいのか」とただしたが、議場は容認派のやじなどで終始ざわついた。「言論の府」とは程遠い、緊張感に欠けた風景が広がった。
反対討論したのは共産の平良行雄氏(鹿児島市・鹿児島郡区)、無所属の平原志保氏(霧島市・姶良郡区)、橋口住眞氏(出水市区)、小川美沙子氏(鹿児島市・鹿児島郡区)、岩重仁子氏(同)。
岩重議員は他県の例を示しながら「建設費も維持管理費も分からないのに設計費を認めていいのか。複数の企業に基本構想を基に見積もりを出してもらうべきだ」と強調。設計後、建設費が示された時点で再度議論するとの意見には「初期費用を支払った後に事業が見直されたことがあるか」と反論。「人口が減り、税収も減り県民1人当たりの負担が増える。未来の子どもたちはそんな施設を望まない」と問いかけた。
平良氏は、体育館建設には反対しないとしつつ、コンベンションや国際会議など「MICE(マイス)」機能の整備には費用対効果の観点から再考を促した。建設費約606億円を投じた県庁舎の現状を「(節電で)昼の庁舎内は暗く、エスカレーターが動くのを見たことがない」と指摘。「十分な予算が確保できず現状でも我慢を強いられている。巨額の建設費が県民生活に影響してきたことは間違いない。県の脆弱(ぜいじゃく)な財政状況に見合った建設計画を立てるのが肝要」と訴えた。
討論中、異論に耳を傾けようとする雰囲気は薄く、時間切れを指摘するため手元のタブレット端末で計り、やじを飛ばす自民議員もいた。
閉会後、記者団の取材に応じた塩田康一知事は、討論の内容について「いろんな意見がある」と受け止めた上で、「県大会が開催できる最低限の規模の捉え方など、県の認識とかみ合っていない部分もある。今日の反対意見を精査し、改めて理解してもらえるよう努力する」と語った。