身近な場所が観光地に…増える外国人を九州の宝に(西日本新聞)

2025/07/06 06:00
相島の続々と上陸する乗客たち。平日は海外からの客が7割ほどを占めるという=福岡県新宮町
相島の続々と上陸する乗客たち。平日は海外からの客が7割ほどを占めるという=福岡県新宮町
 福岡市の隣にある福岡県新宮町沖で約200人が暮らす相島(あいのしま)。6月の平日午前、定員約150人の定期船が到着すると、韓国語、中国語、英語が船着き場に飛び交った。香港の女子大学生2人組は「田舎も好き。島を歩いて巡りたい」とさっそくカメラを構えた。

 12年前、米国のCNNテレビが「世界6大猫スポット」の一つとして紹介したことで、この島は一躍海外の注目を浴びた。2013年度に約10万人だった定期船の乗船者は19年度に約20万人に。新型コロナウイルス禍後の現在は再び急増しており、「平日は7~8割が外国人。週末や晴れの日には臨時便を出しても一度に乗せられないことがある」と三舩清和船長も驚く。来島者に尋ねると、多くはSNS(交流サイト)を情報源にしていた。

 ただ、多くは船着き場周辺の猫と触れ合うぐらいで、30分後の便で帰る人も。新宮町産業振興課は「島を含め町内には宿泊施設がほとんどなく、経済波及効果は限定的」。公共トイレの維持費などは住民の負担で、海鮮丼などを販売する稲光芙美子さん(43)は「恩恵を受けない島民も多く、入島税などを検討してもいいのでは」と話した。

 九州4紙のアンケートでは、住宅街などでも外国人観光客を見かけるようになったとの回答も目立った。歓迎の一方、観光スポットや人気店について「外国人ばかりで行きづらくなった」との声もある。

 福岡市中央区のオフィスや住宅が並ぶ一角。「讃岐うどん志成」には午前11時の開店前から訪日客が行列をつくる。約20席の店は08年に開業したが、ここ数年で訪日客が急増。やはりSNSで、韓国人を中心に人気が広がったという。「わざわざ来てもらえて光栄」。志浪政憲店長(51)は喜ぶ一方で、行列に並ぶ時間的な余裕がある外国人が客の大勢を占め「地元の人が入りにくくなった」と心配する。

 アンケートでは一部の外国人旅行者のマナーを問題視する声も目立った。

 福岡市に近い篠栗町の寺院「南蔵院」は、訪日客の増加に伴ってトイレ清掃や警備の負担が増しているとして今年5月、訪日客のみを対象に入場料300円の徴収を始めた。境内での飲酒や、桜の枝を折って写真を撮る外国人もいたという。林覚乗住職(72)は「行政は誘致を進めるなら最低限のマナーを啓発してほしい」と訴える。

 日本政策投資銀行などの24年調査で「九州」を訪ねたい人の割合は、訪日経験のない外国人旅行者では4%にとどまり、東京や北海道などと大きな開きがあった。しかし、訪日2回以上では5倍近い19%に。日本旅行人気がさらに加速する中で、九州への関心が今後さらに高まるのは確実といえそうだ。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >