悪石島から避難し、フェリーで鹿児島市に到着した住民=4日午後6時、鹿児島市本港新町の南ふ頭
「まずは、ゆっくり眠りたい」-。3日午後に震度6弱を観測した十島村の悪石島で一部住民の島外避難が4日に始まった。村営船「フェリーとしま2」に乗船した13人は、同日夕方に鹿児島市に到着すると安堵(あんど)の表情を浮かべた。一方で、島に残った友人らを心配し「早く地震が収まってほしい」と願った。
通常運行中の村営船(奄美市発鹿児島市行き)は、午前7時ごろに悪石島の港に入港。キャリーケースを抱えた男性や赤ちゃんを抱っこした女性、中学生らが次々と乗り込んだ。
給食調理員の有川美香さん(50)は、母親の末子さん(72)と一緒に避難。震度6弱の地震時は屋外におり、「電柱やガードレールが激しく左右に揺れていて、見たことがない光景に驚いた」と振り返る。その後も続く地震に、「再び大きな揺れが来るのではと恐怖を感じた」。乗船後には、「ちょっと安心できた」と目に涙を浮かべていた。
末子さんは、牛の世話などのために島に残った人たちのことを心配していた。落ち着ける島の暮らしが好きといい、「早く安心して生活できるようになってほしい」と話した。
悪石島からは住民以外も乗船した。昆虫などの調査で3日に入った岡山市の岡山理科大学2年右田南琉さん(19)は急きょ帰ることに。「地震の回数が多くて怖かった。高齢者を中心に疲れているようだったので、島に残った人たちには今後も気を付けながら生活してほしい」
村営船は10分ほどで出港し、港では見送りに来た住民ら約30人が船に向かって手を振り続けていた。
フェリーとしま2が鹿児島港に到着したのは午後6時前。役場職員や知人らが出迎えた。年配の住民や赤ちゃんを抱いた女性が最初に船を降り、悪石島学園の山海留学生が続いた。
到着後に報道陣の取材に応じた有川美香さんは「住民同士で大丈夫と声かけをしていた。人と人との絆を感じた」。村教育委員会の安藤巧教育総務課長は「心配したと思う」と迎えに来た留学生の保護者を気遣った。