鹿児島和牛の認知度向上などを図るため、米国で催されたレセプション=2023年2月、ワシントン(県提供)
トランプ米大統領が日本に対し25%の関税を8月1日から課すと通知したことが明らかになった8日、対米輸出を手がける鹿児島県内の農林水産業関係者からは「販売低下が心配」「政府はしっかり交渉を」などの声が聞かれた。
肉用牛の生産・肥育、牛肉の加工販売のカミチクグループ(鹿児島市)の上村幸生海外営業部長(34)は「米国の取引業者から、交渉中の案件に対するペンディング(保留)の連絡が入った」と困惑する。同社の輸出量で米国向けは全体の5%未満にとどまるものの、「今後の交渉次第では、高級部位の販売が落ち込むのでは」と話す。
ロイン系(ロースなど高級部位)は米国で人気な一方、国内では消費低迷が続いており、販路を国内に切り替えようにもさばききれるか不透明だ。上村部長は「追加関税により牛肉が売れなくなると相場が下がり、中長期的には和牛農家の離農につながりかねない」と負の連鎖を懸念する。
県内の農林水産物輸出額は2023年度、367億円あり、米国向けは牛肉や養殖ブリなどを中心に46%の170億円を占める。加工食品全体の輸出額は約22億円。鹿児島が生産量日本一を誇るかつお節は5億2000万円で、米国向けは60%に上る。
「和食ブームを受け、米国での販売は伸びている最中だったのに」と気をもむのは、枕崎水産加工業協同組合の的場信也組合長(59)=的場水産社長。関税が25%に引き上げられると、現地の価格上昇につながる恐れもある。「販売が落ち込まないか心配。政府は関税率が少しでも引き下げられるよう粘り強く交渉を」と注文した。
県は、トランプ米政権の相互関税発表を受け、相談窓口の設置やヒアリングを実施してきた。県総合政策課の中村敬一郎参事(53)は「今のところ県内事業者への大きな影響はない」としつつ、追加関税発動に備え「金融支援や米国以外の輸出拡大など、影響を最小限にする取り組みを模索したい」と話した。