継続的な支援の重要性を訴える鹿児島大学医学部の日隈利香助教=15日、鹿児島市
群発地震が続く鹿児島県トカラ列島の十島村悪石島と小宝島からの島外避難者のうち、帰島の意向を示した16人を乗せた村営船が16日、鹿児島市を出発した。災害時の避難の在り方を研究する鹿児島大学医学部の日隈利香助教(社会福祉学)は、島外避難者と島で生活を送る住民を持続的に支援する仕組みづくりの重要性を訴える。
-島外避難者の一部帰島が始まった。
「避難者は自宅や島がどうなっているか確かめたい気持ちがあるだろうし、意向は尊重するべきだ。島で生活する際は、枕元に貴重品や靴を置いておくなど、強い揺れが起きた時にすぐ避難できるよう準備しておくことが大切だ」
-地震は終息の見通しが立たない。
「先行きが見通せない中でストレスが高まると体調にも影響する。持病がある人もいるだろう。必要時には医療費を一時的に免除するなど、生活する上での不安を取り除く工夫が求められる」
「子どもの保育・学業支援ではオンライン授業以外にも外で遊んだり、友達と交流したりする機会を設けてほしい。親が不安になると子どもも不安になる。いざ病気になった場合に小児科や病児保育を利用しやすくするなど、保護者の負担軽減も考える必要がある」
-今後はどのような支援が求められるか。
「住民を継続的に支えるシステムをつくることが大切だ。昨年の能登半島地震ではボランティアが活動した。無償ではなく有償のボランティアとすることで、仕事の一環として継続支援ができる。被災地医療を中期的に支えるJMAT、精神医療を支援するDPAT、福祉・心理的支援をするDWATといった組織もある。行政職員や地元医療機関が疲弊しないためにも専門家との連携が不可欠だ」
-影響がさらに長期化した際に気をつける点は。
「避難者はホテル生活が続き、外食が多くなると栄養バランスが崩れる。食生活の支援をする日本栄養士会のチームもあるので連携を図れるのではないか。コミュニティーを維持するため、避難者同士が交流する場を設けることも考えておいた方がいい」
「島に残る人は揺れが続く中で生活を送ることでストレスが蓄積する。心身のケアを図る方法を考えることも必要。例えば日本鍼灸師(しんきゅうし)会は熊本地震の被災者を支援した。人は抱えている不安を吐き出すと心が楽になることもある。避難者も含め、住民の声に継続して耳を傾けることが大切だ」