国際大の山口真一准教授
交流サイト(SNS)には選挙に関する投稿があふれている。20日の参院選投開票が迫る中、有権者は玉石混交の情報とどう向き合えばいいのか。SNS上の偽・誤情報や誹謗(ひぼう)中傷を研究する国際大学GLOCOMの山口真一准教授(計量経済学)にSNS選挙の潮流や投票する際の心構えを聞いた。
今回の参院選の新潮流としては、公示前は注目度が低かった「外国人」問題が、SNS上で急速に関心を集め、参院選関連ワードで1位となったことが挙げられる。SNS戦略に長(た)けた参政党が「日本人ファースト」を掲げて火がついた。2024年以降、特にSNSに力を入れている他党も敏感に察知。街頭演説や投稿でそれぞれの立場から政策を発信し、さらにSNS上で拡散されるという循環が生まれている。
SNSは、政治に関心が薄かった層にも情報が届きやすく、参加のハードルを下げる。24年の兵庫県知事選では投票率が前回比で15ポイントも上昇した。これは、SNSなどを通じて多くの人が政治的情報にアクセスし、行動につながった結果と考えられる。
SNSは感情を揺さぶる強い言葉ほど拡散されやすい特性がある。その結果、冷静な政策論議より、扇動的・対立的な投稿が注目を集めやすくなり、議論が極端になる傾向が強まる。その結果、社会の分断が進む。SNS上で過激な言説や真偽不明の情報が広がることで、人々の間に対立や不信感が生まれ、対話が困難になる。
本来、選挙は民主主義のプロセスの一つにすぎない。選挙で意見がぶつかることはあっても、終わった後は立場を越えて同じテーブルに着いて意見を交わし、合意形成を図ることが必要だ。だが、選挙の時点で分断があまりに深まってしまうと、対話や協力が難しくなり、民主主義の土台そのものが揺らぐ。
有権者は、大前提として「自分もフェイク情報にだまされるかもしれない」という意識を持つことが大切だ。実は私の研究では「自分は批判的思考ができている」と自信のある人ほど逆にフェイク情報を信じやすく、拡散してしまう傾向があることが分かっている。
その上で、情報を見たときにすぐに「いいね」や「シェア」をするのではなく、一呼吸置いて考える習慣を持つことが重要だ。情報は誰が出しているのか、専門性はあるのか、利害関係はないか、他の信頼できる情報源ではどのように報じているのか。これらを確認するだけでも、誤情報に流されるリスクを大きく減らすことができる。
マスメディアによる各党・候補者の主張の比較、各党・候補者のウェブサイト(1次情報)の確認など、あまり手間がかからない手法で政策は確認できる。私たちに返ってくるのは政策であり、政策に注目して投票することが大切だ。