支持者らに大きく手を振り笑顔を見せる尾辻朋実さん=20日午後8時43分、鹿児島市加治屋町
開票直後の20日午後8時、報道各社が無所属新人の尾辻朋実さん(44)の「当選確実」を伝えると、鹿児島市加治屋町の事務所は「やったー」と歓声が上がった。拍手で迎えられた尾辻さんは、目に涙を浮かべながら深々と頭を下げた。「支えてくれた人々に感謝。虫の目に徹し、困っている人を支える父が貫いた政治姿勢を受け継ぐ」と力強く語った。
自民現職の父・秀久さんの今期限りの勇退に伴う自民公認候補の公募に漏れ、無所属で立候補を表明。立憲民主の推薦を受け、連合鹿児島も足並みをそろえた。公示5日前には共産が候補擁立を取り下げ、追い風となった。
選挙期間はポロシャツとスニーカー姿で県内を駆け回った。地方は1次産業や経済が疲弊している上に物価高が直撃し「悲鳴のような声が聞こえる」と演説。「個人の努力だけでは都市部との格差は解消できない。一歩も進めない人の背に手を添えるのが政治の役目だ」と消費減税を訴えた。
郵政民営化を進めた小泉改革以降の20年間を「大企業と都会が地方を食い物にしてきた」と批判した。一方、自民重鎮の故・山中貞則さんを「尊敬している」と明言。自民批判だけに終始しない姿勢について、陣営幹部は「古き良き自民党を支援してきた層も共感したはずだ」と振り返った。
県内選挙区で初の女性国会議員となる。周囲は「女性初」を強調するものの、本人は「1人の人間として女性の声をしっかり永田町に伝える」と気負いはない。
「選挙を通じて生活に困窮する人と数多く出会った。当選はゴールではなくスタート」との思いから、自身は万歳をしなかった。「地方選出の議員と党派を超えて連携し、地方の課題解決につながる政治に取り組む」と今後も無所属を貫く。