〈参院選鹿児島〉自民・森山幹事長が繰り返した「消費税を守り抜く」が逆風に――“牙城”崩落に水面下の動き 初の女性議員「歴史的勝利」した背景

2025/07/21 11:14
敗戦の弁を述べ、支持者に頭を下げる園田修光さん=20日午後8時18分、鹿児島市郡元2丁目
敗戦の弁を述べ、支持者に頭を下げる園田修光さん=20日午後8時18分、鹿児島市郡元2丁目
 「保守王国」と呼ばれる鹿児島で、1998年から改選議席を独占し続けてきた自民党の牙城が崩れ去った。前参院議長の尾辻秀久氏の勇退に伴う現職不在の鹿児島選挙区を制したのは、秀久氏の三女である尾辻朋実氏だった。物価高対策や政治とカネ問題による自民への不満が渦巻く中、「政治を変えよう」とのメッセージで批判票を取り込み、強固な地盤に風穴を開けた。衆参通じ県内選挙区では初の女性国会議員となり、歴史的勝利だ。

 尾辻氏は秀久氏の後継を狙い名乗りを上げた自民公認候補の選に漏れ、立憲民主党の誘いを受けて無所属で立候補した。この経緯から野党や連合鹿児島の支援に温度差がみられたものの公示5日前、「自民に戻らない」と宣言。共産党の候補擁立取り下げが実現したことが転換点となった。

 選挙戦突入後は父譲りの演説で「地方の衰退は自民政治のせいだ」と真っ向批判。「秀久氏の娘」を前面アピールしても世襲批判が高まることはなかった。秀久氏の支持者らが水面下で自民票を切り崩し、無党派層まで支持を広げ突き放しに成功した。

 衆参10年の経験がある自民元職の園田修光氏は党副総裁の菅義偉元首相との縁が深く、党本部が公認を決めた。当初は県連内にわだかまりが残ったが、6月以降は「森山裕幹事長のお膝元で負けられない」と県議や国会議員らが総力を挙げ組織戦を展開。幹事長自ら何度も地元入りし引き締めたが浸透しきれなかった。

 派閥裏金事件以降、自民への不信感は払拭できないままだ。森山氏が矢面に立ち繰り返した「責任政党として消費税を守り抜く」との主張は野党の減税論にかき消され、自民批判を一層あおった側面もある。県内3選挙区で敗北した昨年の衆院選に続き、自民の求心力低下を浮き彫りにした。

 尾辻氏に加え、自民票を奪ったのが参政党だ。新人の牧野俊一氏が訴えた「減税と積極財政の両立」は保守層に響き、大勢が集まる演説会場もあった。地方議員や党員らの支援に加え、交流サイト(SNS)を積極活用し支持を拡大。組織や動員に頼らない新たな運動の形を示したと言える。

 投票率は前回より大きく伸び56.46%となった。コメやガソリンなど物価高にあえぐ有権者が暮らしに直結する政治と向き合い、自公議席の大幅減を突きつけた意味は極めて重い。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >