飛んでいくよ 母を守るために~♪ 特攻隊員だった父の思いを歌に、大阪のシャンソン歌手・伊丘衣里さんが万世でライブ

2025/09/04 17:30
石蔵で「1945年の夏」を歌う伊丘衣里さん=南さつま市の丁子屋
石蔵で「1945年の夏」を歌う伊丘衣里さん=南さつま市の丁子屋
 大阪市都島区のシャンソン歌手、伊丘衣里さんが、陸軍特攻隊の生き残りだった父の気持ちを歌った曲「1945年の夏」を、鹿児島県南さつま市加世田唐仁原の丁子屋石蔵で披露した。会場は多くの隊員が飛び立った万世飛行場の近く。子守歌のような優しいメロディーに乗せて「飛んで行くよ 母を守るために」と熱唱。約100人がしんみりと聴き入った。

 伊丘さんの父・宮崎鶴馬さん=2018年に93歳で死去=は数え16歳で志願して少年飛行兵になった。特攻隊員として出撃後に不時着、入院先で終戦を迎えた。当時のことはあまり語らず、どこから飛び立ったのか不明だ。生前は知覧特攻平和会館をたびたび訪れて慰霊したという。

 伊丘さんは「父の経験を歌で残し、若い世代に戦争を伝えたい」と作詞して歌い、17年アルバムに収めた。8月27日に戦後80年の節目として徳間ジャパンからシングル盤を販売。知人の紹介を受けて同24日、特攻基地のあった南薩で記念ライブを開いた。

 母に別れを告げて飛び立つ情景、爆弾を抱え空母に向かう様子を歌い上げると、会場からすすり泣く音が聞こえた。カザフスタン出身で南さつま市金峰のバイオリニスト今用アシェルさん(45)、鹿児島市のピアニスト塩屋祐典さん(48)が切ない曲調を引き立てた。

 南さつま市金峰の美容業楠田尚美さん(57)は「戦争を体験していない世代。歌詞でイメージが湧いた。この歌を通じて記憶を風化させないよう願う」と話した。伊丘さんは「多くの人に父の思いを伝えられた。カラオケで歌ってほしい」と感謝した。

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