「ザ・パルス霧島」の開業を祝う関係者=8月、霧島市霧島田口
鹿児島県霧島市内でホテルの建設が相次いでいる。鹿児島空港の所在地で霧島連山や温泉、霧島神宮といった観光資源に恵まれ、さまざま企業が拠点を置くなど、宿泊需要が見込まれる地域。霧島地区や空港付近では大型施設の建て替えや新たな宿泊施設が開業し、国分ではビジネスホテルの新規開業が複数計画されている。
8月16日、同市霧島田口に全243室の大型“ネーチャーリゾートホテル”と銘打つ「ザ・パルス霧島」がオープンした。家族連れをターゲットの一つにした同ホテルは、プールや子ども用の屋内アスレチック、テニス・バスケットボールコート、屋上テラスなどがある。
同日の開業セレモニーには関係者や地元住民ら約80人が出席。2024年に閉館した「アクティブリゾーツ霧島」のリブランド開業を祝った。「パルス」は鼓動を意味する。友岡大輔総支配人(43)は「ホテルから望める雄大な霧島連山が最大の魅力。躍動する山々の鼓動を感じてほしい」と話す。今後は日帰り客へのサービスも拡充していく予定という。
24年に閉館した同市溝辺の「かごしま空港ホテル」も建て替えが計画されており、市によると27年に新ホテルが完成する見込みだ。
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市観光PR課によると、24年の市内の宿泊者数は77万8436人(前年比94.02%)で、内訳は国内客70万9064人(同90.19%)、外国人6万9372人(同166.15%)だった。市内約120カ所の宿泊施設には、一晩で1万人ほどが泊まれる。
9月初旬、週末の同市霧島大窪のJR霧島神宮駅周辺は、家族連れや若者でにぎわい、外国人の姿もあった。同駅から徒歩5分の場所に10月、1泊1人1万円以下から泊まれるコンテナ型のホテル「NANUKA HOTEL(ナヌカホテル)」が開業する。2~4人用コンテナが6棟並び、フリースペースではバーベキューなどができる。
同月、駅近くに訪日客などに向けた高級宿「ただよう宿霞燦(かさん)」もオープンする。両施設を管轄、運営する鹿児島市の「IFOO(イフー)」によると、駅周辺にはこれまで宿泊施設がなかった。いずれも施設内で食事の提供はなく、イフーの太田良冠プロジェクトマネジャーは「街を歩き、地域の飲食店を利用することで駅周辺の観光促進につなげたい」と語った。
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市観光協会の徳重克彦会長(59)は、空港や高速がある霧島の魅力に、自然や食べ物、温泉を挙げる。観光地としての需要の高まりは「県外オーナーの全国的に有名なホテルが参入したことで、観光地のイメージが定着したのでは」と分析。ホテルの増加は「国際線の再開が進み訪日客が増加することも見込んでいるだろう」とした。
新燃岳噴火や8月の記録的な大雨で、観光業は大きな打撃を受けた。浸水や断水などで復旧半ばの施設もある。市は9月15日から、市内宿泊者1万人に対して2000円をキャッシュバックするキャンペーンを始める。徳重さんは「まずはお客さんを集めることが大切。将来的には2次交通の充実も進めたい」と話した。
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霧島市国分の市街地では、複数の現場でビジネスホテルの建設工事が進む。国分野口町には、150室の「スーパーホテル」(本社・大阪市)が2026年夏ごろに開業する見込み。国分中央3丁目では、「グリーンズ」(本社・三重県四日市市)が運営するビジネスホテルが数年内のオープンを目指す。関係者は「客室増が街の活性化につながる」と期待する。
市によると、国分周辺のホテルには、企業の工場増築にともなう工事の関連で長期間宿泊する人もいるという。市観光PR課は、日によって予約を取りづらい状況があるとして「ホテルが増えれば、団体で長期滞在したいビジネス客なども受け入れられる」とする。
13年に開業した国分中央3丁目の「アパホテル鹿児島国分」は全155室。前身の「セントラルイン国分」から数えると25年がたった。市役所や病院に近い街の中心地に位置するが、隈元二郎専務取締役(56)は「開業当時、周りは田んぼだった」と振り返る。
平日はビジネス、休日は観光目的の宿泊客が多く、訪日客は月60~70人程度。長期滞在の工事関係者やスポーツ大会で訪れた学生など客層はさまざまだという。新たなホテル建設が進む状況に、隈元専務取締役は「価格競争が起きたり、人手不足になったりする心配はある」としながら「宿泊施設が増えることで大きなイベントを開催できるようになり、霧島全体が活気づいていくだろう」とみている。