世界でも有数…サンゴ礁が隆起し、今も島ごと年間2ミリ上昇――「聖地」で日本唯一の科学研究所が調べる地球規模の変動

2025/09/28 06:45
サンゴ礁の隆起で形成された喜界島(喜界島サンゴ礁科学研究所提供)
サンゴ礁の隆起で形成された喜界島(喜界島サンゴ礁科学研究所提供)
 日本唯一のサンゴ礁研究に特化した「喜界島サンゴ礁科学研究所」(鹿児島県喜界町塩道)は、設立から10年の節目を迎えた。サンゴ礁が隆起してできた喜界島は研究者の「聖地」とされ、同研究所は地球規模の気候変動を調べるほか、交流人口の増加や人材育成に取り組む。渡邊剛理事長は「研究、教育機関としての基盤づくりをさらに進め、持続的なサンゴ礁研究の拠点にしたい」と意欲を語る。

 喜界島は、サンゴ礁を含む地盤が隆起を繰り返して形成された。年間約2ミリのペースで上昇を続けており、世界的にも珍しいという。さまざまな年代のサンゴ礁を地上で確認することができ、研究者には非常に恵まれた場所となっている。

 同研究所は、北海道大学地球環境科学博士の渡邊理事長が中心となって、地域に根ざした研究施設を目指して2015年8月に開所した。旧早町小学校の校舎を活用し、教え子の山崎敦子所長ら研究者数人が常駐する。

 研究ではサンゴ礁の化石に含まれる二酸化炭素濃度を調べ、当時の気候を推測。その年代の遺跡調査の結果から人の活動も推定し、地球温暖化との因果関係を分析する。研究成果は将来の自然との付き合い方を探るヒントになるという。

 夏には全国の小中高生を対象に、研究や調査を体験できる「サイエンスキャンプ」に取り組む。参加者の中には研究を続けるために島に移住した高校生もいた。その動きを地域おこしにつなげようと町は、地元の喜界高校に通いながら研究できる「サンゴ留学」制度を導入し、新たな寮も整備。同校への入学希望者は年々増えている。

 研究所の今後の目標は、職員を増やすなどの受け入れ体制を強化し、若い研究者が持続的に学べる基盤を整えることだ。渡邊理事長は「大学のない奄美群島で、若い人たちが安心してサンゴの研究を続けられるようにしたい」と力を込める。

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