西原商会アリーナに備えてある止水板や土のう。実際に設置するのは相当な時間がかかるという=2日、鹿児島市永吉1丁目
9月中旬に記録的な大雨で三重県四日市市の地下駐車場が水没し、車両274台が浸水被害にあった。鹿児島県内では10月に豪雨に見舞われた例があり、台風シーズンも続く。「想定外」の大雨が増える中、地下施設の冠水対策はどうなっているのか。
県内最大の地下駐車場は鹿児島市の天文館にある「セラ602」。名前の通り602台(1階281台、2階321台)を収容できる。雨で流入が予想される場合、通常使っている出入り口シャッターに加え、鉄製の止水板(高さ61センチ、幅202センチ)3枚を出入り口に置く。「大人2人で持つ重さ」を倉庫から人力で運び出し、土のうも積む。
1992年に開業して以来、翌年の「8・6水害」を含め、浸水被害に遭ったことはない。運営する鹿児島中央地下駐車場の園田広美業務部長は「わずかだが高い立地にあり、頑丈な造り。ただ、大切な車を預かる立場。全く油断できない」と話す。
三重の水没では電動の止水板が故障していながら放置されていた。カクイックス交流センター(鹿児島市、450台収容)の止水板も電動で、毎年2回の点検で動作を確認済み。手動でも動かせるが制御盤は止水板のそばにあり、人が出向く必要がある。「早めの対応を心がけたい」と担当者。
実際の被害を「教訓」として受け継ぐのが西原商会アリーナ(鹿児島市)だ。8・6水害で地下が水没した。これを機に梅雨時期に毎年防災訓練をして、実際に止水板を設置する。中野孝文副館長は「重く、簡単ではない作業。慣れておかないと、いざという時に難しい」と言う。
JR鹿児島中央駅前の地下道も8・6水害を念頭に、出入り口に高さ約1メートルの止水シートを備える。「千年に1回」(12時間の総雨量822ミリ)の大雨を想定した「河川ハザードマップ」では、1メートルを超える浸水が予想されるエリアだ。
市道路管理課の黒田信之課長は、宮城県気仙沼市に復興支援で1年間出向し「防災に100%はないと学んだ」と振り返る。「自助、互助、公助を成り立たせるには対策に不断の見直しが必要。住んでいるエリアにどんなリスクがあるか確かめてほしい」と語った。