政府の開戦責任に触れた「石破首相所感」…県民は評価と疑問「若い世代が戦争を考えるきっかけに」「レームダックの今、必要あるのか」

2025/10/11 06:30
退陣する意向を表明した石破茂首相の記者会見を視聴する市民ら=9月7日午後6時すぎ、エディオン鹿児島山形屋店
退陣する意向を表明した石破茂首相の記者会見を視聴する市民ら=9月7日午後6時すぎ、エディオン鹿児島山形屋店
 石破茂首相が戦後80年所感を発表した。開戦の背景に言及し独自色を出したが、閣議決定しない形式で出すなど自民党保守派の反発を避ける狙いも随所に透ける。鹿児島県内の戦争体験者らは、改めて戦争をしない平和な国を目指す意義をかみしめ、若い世代への継承を望んだ。退陣目前での発表となり、必要性を疑問視する意見もあった。

 県遺族連合会の朝廣三雄事務局長(80)=鹿児島市=は戦没者の無念と遺族の苦難に思いをはせ、「戦没者を敬う日本であってほしい。遺族は高齢化し、子どもの世代も若くて80歳。孫やひ孫の世代にも戦争や戦没者のことを理解してもらいたい」と訴えた。

 「首相が節目に、戦争をしてはいけないとメッセージを出す意義は大きい」。いちき串木野市で継承活動に取り組む男性(90)は評価した。総力戦研究所が「日本必敗」を予測していたことに触れ、「開戦を踏みとどまれていたら多くの人が亡くならなかったはず」と語った。

 「奄美群島の日本復帰運動を伝承する会」の花井恒三事務局長(77)=奄美市=も政府の開戦責任に触れた点を「これまであまり表に出ていない踏み込んだ内容。敗戦が予測されたにも関わらず、戦争に突っ走ったことが改めて強調された」と述べた。一方、降伏が遅れて沖縄戦や原爆投下でさらなる犠牲を生んだとして「終戦の判断は適切だったのか、今回の所感を機に掘り下げて考えたい。ウクライナやガザの停戦に通じるテーマだ」と話した。

 鹿児島市の看護師女性(29)は、弟が自衛官ということもあり、首相が文民統制の重要性を訴えた点に賛同した。「なぜ、あの戦争を止められなかったのかが分かりやすく伝わった。戦争を知る世代が減っていく一方で、若い世代が普段、戦争を話題にする機会は少ない。考えるきっかけになってほしい」。

 日本会議鹿児島の中間貴志副理事長(51)=同市=は「何ら新しい内容はなくこのようなものをわざわざレームダック(死に体)化した今、首相個人の見解として発出する必要があるのか甚だ疑問だ」と批判した。

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