姶良市蒲生で1人死亡の土砂崩れは「表層崩壊」――8月の記録的大雨で鹿児島大調査団が中間報告 見えてきた災害の実態

2025/10/14 21:00
〈資料写真〉崩れた山と倒壊した家屋=8月9日午前7時35分、姶良市蒲生町白男
〈資料写真〉崩れた山と倒壊した家屋=8月9日午前7時35分、姶良市蒲生町白男
 8月の記録的大雨による災害について、鹿児島大学地域防災教育センターは調査団を結成し、中間報告をまとめた。民家の裏山が崩れ1人が亡くなった鹿児島県姶良市蒲生町白男は、ほぼ半日で300ミリの雨が降り、表層土が崩れる「表層崩壊」が発生。姶良市や霧島市では、1993年の8.1豪雨と比べて短時間で同程度の連続雨量が観測され、各地で斜面崩壊を引き起こした。

 調査団代表の寺本行芳教授(砂防学)は姶良市10カ所、霧島市8カ所の斜面崩壊現場を調査。蒲生の表層崩壊は、軟らかい土が堆積してできる「風化土層」が滑落していた。斜面は竹林で元々土壌水分が高かった可能性があるという。各地で発生した崩壊の中には、一般的に崩壊が起こりにくいとされる傾斜30度未満の斜面でも発生した。

 8月8日、霧島市溝辺では1時間に107.5ミリの猛烈な雨が降った。6時間で365ミリ、12時間で483ミリ、24時間506.5ミリはいずれも観測史上最大。1日だけで8月の月降水量の2倍近い雨が降った。それに対し、1993年8月1日の1時間雨量は最大で77ミリ。2日までの48時間で591ミリと長い時間をかけて降った。

 齋田倫範准教授(環境水理学)は姶良市の網掛川の護岸決壊について、当時の水の流れを解析して発生要因を検討する試みを説明。佐藤宏之教授(社会学)は「歴史災害マップ」を使って網掛橋や蒲生地区で江戸時代にも大きな災害が発生していたことを示し、「同じような場所で同じような災害が繰り返し起きている」と指摘した。

 調査団は10人。土木や砂防、地質などの分野に加え、医療看護や文系の研究者も参加して横断的な研究を進め、復旧復興や今後の防災減災に生かす。本年度末をめどに結果をまとめ、来年度の防災セミナーで研究成果を説明する。

 センター長の酒匂一成教授は「幅広い知見から豪雨災害の実態を明らかにし、今後に生かす資料にしたい」と話した。

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