民間船から下船する航空自衛隊の車両=18日午前9時ごろ、鹿児島市の鹿児島港本港区北ふ頭
陸海空3自衛隊の「自衛隊統合演習」が20~31日、鹿児島県を含む全国各地である。離島が戦域となった場合に後方支援を担う本土側では、自衛隊施設から民間の空港・港湾へ弾薬を輸送し、航空機や艦艇に搭載する訓練が計画されている。基地が攻撃される事態への備えや円滑な物資輸送のため、民間施設を使用する戦略が明確になっている。
鹿児島市では18日、訓練の準備が始まっていた。午前8時半ごろ、鹿児島港本港区北ふ頭に防衛省がチャーターした民間船「はくおう」が入港し、隊員や民間の職員に誘導されながら北海道の航空自衛隊の車両が下船。入れ替わるように陸自の車両が乗り込み、午後4時過ぎ沖縄へ出港した。
鹿児島港では今後、長崎県佐世保市から弾薬を陸路で運び、護衛艦に搭載する訓練がある。奄美市の名瀬港では宮城県からの弾薬輸送も計画。霧島市の鹿児島空港では、哨戒機への弾薬搭載や戦闘機の離着陸、補給を初めて実施する。
防衛省によると、基地の滑走路が攻撃などで使えなくなった際、部隊が運用できなくなるリスクを避ける狙い。南西諸島への部隊展開や物資輸送も自衛隊の課題だ。南方や太平洋側へアクセスしやすい位置の民間港湾を使い、迅速な対応を目指す。
民間空港・港湾の利用について内倉浩昭統合幕僚長は9日の定例記者会見で「オペレーションの抗堪性(こうたんせい)=攻撃に耐える強さ=、柔軟性を高めることができ、極めて意義がある」と話した。
県内では14市町村に部隊が展開(宿泊地を含む)、前回2023年より2自治体増えた。基地のほか、民間空港や港湾、海岸、グラウンドなどを使う。異例とされてきた自衛隊施設以外での生地(せいち)訓練が常態化している。
元幹部自衛官は県内各地で生地訓練が計画されていることに「隔世の感がある」と漏らした。