〈高市内閣発足〉初の女性首相に鹿児島県民「地方に目を向けて」「女性参画がさらに進む」 タカ派色の強い政策に懸念も

2025/10/22 06:30
高市早苗氏の首相選出を報じるテレビ画面に見入る買い物客=21日午後2時半、鹿児島市金生町のエディオン鹿児島山形屋店
高市早苗氏の首相選出を報じるテレビ画面に見入る買い物客=21日午後2時半、鹿児島市金生町のエディオン鹿児島山形屋店
 憲政史上初となる女性首相が誕生した。21日、第104代首相に選出された自民党の高市早苗総裁(64)。鹿児島県民からは「地方に目を向けた施策を」「女性参画がさらに進む」といった要望や期待の声が上がる一方、保守強硬派でタカ派色の強い政策への懸念も。自民と日本維新の会による連立政権となるが、少数与党は変わらず、物価高、経済対策など、政治空白で停滞した課題への手腕が試される。

 「初の女性総理になるなら高市さんだと思っていた」。2017年からの2年間、奄美市で県内初の女性市議会議長を務めた師玉敏代さん(71)は喜ぶ。性別に関係なく、人として尊重し合う社会が理想だと感じる。しかし現実の政治は男性議員ばかり。そんな政界でも毅然(きぜん)とした姿に好感を持っていた。「女性の参画もさらに進むのでは。女性の視点を生かして政治を動かしてほしい」と新しい風に期待した。

 霧島市の日本語教師の女性(45)は「ジェンダー平等の観点では歴史的なこと」と歓迎しつつ「女性が生きにくくなる側面はないか」と心配する。強く振る舞う高市氏が、男性化された女性としても映るからだ。

 参院選以降、日々接する外国人が「排外的な主張」に怖がっているのを耳にする。新政権で外国人政策を担うポストが新設される中、「政策の前提となる事実を整理し丁寧に議論して。民主主義の基本である人権を守る政治を」と望んだ。

 高市氏が導入に消極的な「選択的夫婦別姓」でも不安の声が上がる。結婚で改姓後も仕事では旧姓を使う姶良市の弁護士竹山真美さん(43)は「議論が停滞しないか」と心配する。

 高市氏は旧姓の通称使用法制化を目指すとしていたが、旧姓での銀行口座の開設手続きは煩雑でかなり手間がかかった。戸籍使用と比べて不便な部分を解消してほしいと望むものの、旧姓使用は海外では理解されづらいとも聞く。「選べる姓を望む人の声にも耳を傾けて」と注文した。

 新政権は外交安保でもタカ派的な色合いが鮮明だ。
 「中国の力による現状変更に対しては言うべきことを言って」と話すのは、鹿児島市の経営者男性(60)。妻が台湾人で中国語通訳案内士の資格を持つ。商談で中国や台湾を行き来し、経済発展の強さも独裁的な怖さも感じた。「強硬姿勢ばかりでは危うい。まだ穏やかな現状が続くようバランスを取りながら向き合って」

 元海上自衛官の男性(69)=鹿屋市野里町=は次女が陸自に勤める。隊員である以上、「有事の覚悟はできていると思う」。半面、親としての心配はやはりある。「国家」単位の議論だけでなく、隊員の「現場」を見つめてほしいと願う。「危険度の高い任務と良く分かっているはず。良いとは言えない待遇の改善や、有事の際の対応など現場目線の施策を」と求めた。

■物価高騰、人手不足…「一刻も早い打開策を」

 物価高騰が家計と産業に影を落とし、鹿児島県民の暮らしは疲弊している。少子高齢化による人手不足も続く。地方の実情を直視し、一刻も早い打開策を新政権に求める声が上がった。

 家族とドライブインを営む阿久根市の女性(47)はため息をつく。「政治に期待が持てない。状況が変わるのを待っている余裕なんてない」

 手頃な価格で新鮮な魚とボリュームのある定食が人気の店を物価上昇が直撃している。中でも頭が痛いのがコメの高騰だ。先日、取引業者から4割の値上げを告げられた。「1年前の2倍。夏に値上げしたばかりで、お客さんにお願いできない。新しい首相には地方や中小企業の現状を理解してほしい」と注文した。

 南種子町の会社経営者男性(49)は、高市氏が積極姿勢を示すガソリン減税に期待を掛ける。離島は輸送コストがかかる上に市場が小さく、ガソリンは常に高値傾向。「早期に減税を実現してほしい。物価高もあって島民の負担は限界だ」と話す。

 自民と維新が2026年4月実施で合意した高校無償化について、薩摩川内市のパート女性(42)は「短期的に見れば家計が助かるが、結果として税金が上がれば同じこと。財源を示してほしい」と懐疑的だ。長男と次男は専門学校と私立高に通い末娘は高校受験を控える。「部活動の遠征費や制服代、通学費などもかかる。多少の手出しは仕方がない」と漏らす。

 地方では少子高齢化が進み、後継者や人手の確保もままならない。

 「今の政策は大規模農家ばかりを向いている」。日置市でコメ作りを長年続けている男性(74)は不満を抱える。「小農を大事にしなければ十数年後には誰もいなくなるのではないか。定年前後の農家の跡継ぎが魅力を感じる政策を打ち出して」と求めた。

 指宿市の保育園長男性(56)によると安倍晋三元首相が待機児童ゼロを掲げ、全国的に保育所の定員を増やしたが、地方では園児が集まらず、経営が圧迫される園も少なくないという。「保育士の確保も課題。今後はさらに地方に目を向けた政策を頑張ってほしい」

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