風車8基の建設が計画されている八重山周辺。手前には日置市・重平山の風車が並ぶ=日置市伊集院の城山公園から撮影
鹿児島市と薩摩川内市にまたがる八重山周辺の風力発電計画で、経済産業省は29日、事業者が提出した環境影響評価(アセスメント)の評価書について確定通知を出した。環境アセスの最終段階に当たる評価書は変更の必要がないと国が計画を容認した。今後1カ月間の公告・縦覧を経て、建設に向けて動き出す。
事業者は国内外で再生可能エネルギー事業を展開するヴィーナ・エナジー(本社シンガポール)の子会社「かごしま郡山風力合同会社」(鹿児島市)。170ヘクタールに高さ最大159メートルの風車8基を整備する。総出力は3万キロワットで、電力量は一般家庭2万2000世帯分に相当。計画では2026年5月に着工し、29年3月から営業運転を予定する。発電は48年まで19年を見込む。
環境アセスの手続きは、同社が鹿児島県知事と鹿児島市長などに評価書を送付するとともに、1カ月間公告・縦覧して終了する。その後、国による工事計画の審査や工事に向けた地元説明などが予定される。
計画は19年9月、環境アセスの手続きで事業者が提出した配慮書で始まった。その後、21年12月に出された準備書では約439ヘクタールの敷地に風車9基を想定。県知事意見や経済産業省の勧告を受け、風車は9基から8基に、土捨て場を9カ所から3カ所に削減、敷地も大幅に縮小した。
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八重山の風力発電計画は、環境アセス評価書が確定し、最終関門を通過した。議会での陳情審査や県の景観形成ガイドラインの審査も続いているが、経済産業省の容認を受け、工事開始へ向けた許認可手続きが進んでいく。
計画を巡っては、住民に賛否両方の意見があり、それぞれ県議会と鹿児島市議会で陳情審査が続いている。環境アセスの準備書段階では、県が38項目にわたって知事意見を付け、事業者側は計画を縮小した。県は修正計画に対しても7項目が反映されていないと指摘したが、事業者は「最大限対応した」として最終段階を迎えていた。
制度上、評価書に県の意見を反映させるかは事業者に委ねられている。経産省の変更命令がなければ評価書は確定し計画が進む。県は独自に設けている景観形成ガイドラインの協議書を審査中だが、法的拘束力はない。秋田市で5月に起きた風車落下事故を受け、風車の配置変更を求める要望もあり、30日は鹿児島市議会で陳情審査が行われる。
計画に反対する「八重山こいやまを守る会」の谷山亮共同代表(48)は「国には地域で分断が起きていることを伝えてきた。全国的にも問題化し、見直しの議論もある。この状況下で従来通りに通すのは疑問だ」とし、白紙撤回と制度見直しを求めた。