11月から時給アップだけど…「最低賃金では人手は集まらない」――企業の苦悩が浮き彫り、回答6割超が「最賃より高く設定」 鹿銀・KER調査「二極化が広がる」

2025/10/31 07:03
最低賃金引き上げの街頭キャンペーン前にあいさつする永野和則鹿児島労働局長=30日、鹿児島市のJR鹿児島中央駅前
最低賃金引き上げの街頭キャンペーン前にあいさつする永野和則鹿児島労働局長=30日、鹿児島市のJR鹿児島中央駅前
 鹿児島銀行(鹿児島市)と九州経済研究所(KER、同市)は30日、県内企業317社を対象とした最低賃金の引き上げに関する調査結果を発表した。改定後の賃金を、最低賃金より高く設定すると回答した企業は63%だった。郡山明久頭取(68)は「人手確保を意識した結果。対応できるところとできないところの二極化が広がるのではないか」と話した。

 県内の最低賃金は11月1日から73円上がり、1026円となる。「大いに影響がある」「影響がある」と答えた企業は計74%に上った。業種別では卸売業が84%で最多。製造業76%、小売業75%、その他産業が74%、建設業65%と続いた。

 対応策は39%が「従業員のスキルアップによる生産性向上」と答えた。次いで「人件費以外のコストカット」36%、「商品・サービスへの転嫁」35%だった。

 必要とする企業への支援策は「税金・社会保険料などの負担軽減」が57%、「設備投資への補助金・助成金の拡充」が42%、「人材育成・教育への支援」が37%となった。

 郡山頭取は「最低賃金の引き上げが、デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)などを活用した業務効率化の背中を押す効果はある」と説明した。

 調査は9月下旬に実施した。

◇労働局が引き上げを街頭PR

 鹿児島県の最低賃金が11月1日から1026円へ引き上げられることを周知しようと、鹿児島労働局などは30日、JR鹿児島中央駅前で街頭キャンペーンをした。引き上げ額73円は、2002年度に時給で示す方式になって以降最大。企業への支援策もPRした。

 経営者や労働者団体、県職員ら約45人が参加した。通行人約1500人にポケットティッシュを手渡しながら、新しい最低賃金額とともに、最低賃金を順守しているか労使とも確認するよう呼びかけた。

 同局の永野和則局長(59)は「最低賃金は全ての職場に適用されるセーフティーネットで、人材確保に向けた環境整備の根幹。中小零細企業への影響は大きいが、助成金などもあるので相談して」と話した。

 24年度の最低賃金953円は、最も高い東京と210円の開きがあった。今回は東京が63円増の1226円に改定されるため、差は10円縮まり200円となる。

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