〈資料写真〉自衛隊基地の整備が進む馬毛島=1月10日、西之表市の馬毛島上空(本社チャーター機から撮影)
鹿児島県西之表市馬毛島で整備が進む自衛隊基地建設を巡り、冬場の高波により大型の船が接岸できず島内で使う燃料が不足し、「作業員の一時撤退が相次いでいる」との情報が地元で飛び交っている。複数の関係者は、重機が使えず相当数の作業員が島を離れたと認める。防衛省は補給の不足を否定するが、現場の声からは物資調達を島外からの輸送に頼るしかない「離島の離島」の特殊性が浮かび上がる。
馬毛島は種子島の西約10キロに位置し、燃料や物資は島外からタンカーなどで運ぶ。本土と結ぶ電力ケーブルは整備中で、島内で使う電気も燃料を使った発電機で賄う。大きな港湾はなく、建設した3本の仮設桟橋が物資補給の生命線だ。桟橋は島から真っすぐ海へ突き出す形で、波が高いと大型の船は接岸できない。
11月上旬、地元では「今月中に馬毛島の作業員を空にする」「年内は工事がストップする」といった情報が流れた。複数の関係者によると、燃料や物資を輸送する大型の船が寄港できない日が続き燃料が不足。乗用車や重機への供給制限が始まった。
燃料は4200人(8月27日時点)が暮らす仮設宿舎の発電機にも使われる。このため、一時は島内の仮設宿舎に滞在する全作業員の「退島」も検討されたという。複数の建設業者は重機を使った一部の工事は完全に止まり、多くの作業員が離島したと明かす。1000人規模の作業員が島を一時離れたとの見方もある。
これに対し、防衛省は「天候を考慮し、適時適切に補給しており、必要な量を備蓄している。現時点で燃料や食料が枯渇する状況は想定してない」と物資の不足を否定。島に滞在する現在の作業員数は「日々出入りがあり、すぐには明らかにできない」としている。
西之表市の港では今月8日、大きな荷物を抱えて馬毛島から帰ってきた作業員が続々と船を下りた。一方、島へ渡る作業員の姿もあった。重機を使わない工事は続いているとみられ、「退島」から一転してできるだけ島にとどまるよう要請もあったという。
ある建設業者は「燃料だけでなく食料が足りなくなれば社員が飢える。国は補給をしっかり考えているのか。工事のピークが海が荒れる冬場と重なることは分かっていたはずだ」と嘆く。別の業者は「少しの中断はこれまでもあったが、これだけ止まった例はない。大人数が動くと住民に影響も出る。国は丁寧に説明してほしい」と話した。