1000年の歴史は無残に焼失した…輪島朝市は今――「ピンチをチャンスに」。再スタートを切った売り手たちは、県内外へ出店し立て直しを待つ

2025/11/16 18:03
地元の商業施設内で営業を続ける輪島朝市の冨水長毅組合長。修学旅行生などもやってくる
地元の商業施設内で営業を続ける輪島朝市の冨水長毅組合長。修学旅行生などもやってくる
 鮮やかなオレンジ色ののぼりやテントの下に、海産物や野菜、陶器、漆器類が並ぶ。能登半島地震による大規模火災で焼失した輪島朝市は、「出張朝市」として石川県輪島市の商業施設の一角で常設営業している。元の「朝市通り」から1キロほどの場所だ。

 「見ていって」。大きな呼び声に足を止めた。浜木妙子さん(76)は、手作りした魚の一夜干しを販売する。朝市で働き40年。再スタートしたのは「人としゃべることができるから」だ。以前のにぎわいとは比べものにならない。それでも、目の前の仕事に余念がない様子だった。

 輪島朝市は日本三大朝市の一つとされ、1000年以上の歴史があるともいわれる。輪島港そばの商店街に露店が立ち、売り手と客の掛け合いが飛び交う観光名所だった。元日に起きた火災が鎮火したのは5日後で、約240棟、4万9000平方メートルが焼けた。

 昨年3月以降、各店は県内外への出店を始めた。現在は同市と金沢市内で以前の4割ほどの約70人が再開する。「震災がなければ“出張”する発想はなかった。ピンチをチャンスに変えていきたい」と冨水長毅組合長(57)。軽トラックを可動式の店舗とする「軽トラ市」も検討する。

 今年4月に公費解体を終えた焼け跡はさら地のまま、雑草に覆われていた。市は一帯の区画整理を進める。冨水組合長は本格復旧に3年から5年はかかるとみている。高齢化や人口流出を見据え、なりわいの場立て直しへ一歩ずつ、模索は続く。

〈能登半島地震「被災地を歩いて~本紙記者ルポ」より〉

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