「第30回釜山国際映画祭」でワールドプレミアを飾った『愚か者の身分』(左から2番目から)永田琴監督、林裕太、森井輝プロデューサー
韓国・釜山で開催中の「第30回釜山国際映画祭」〈メインコンペティション部門〉に選出された映画『愚か者の身分』が18日に、映画祭メイン会場の「映画の殿堂(釜山シネマセンター)」ハヌリョンシアターで上映された。ワールドプレミアとなった上映には、主演の林裕太、永田琴監督、森井輝プロデューサーが登壇し、観客から温かい拍手を受けた。
【画像】オープニングセレモニーに登場した『愚か者の身分』チーム
本作は、第二回大藪春彦新人賞受賞作、西尾潤の同名小説が原作。愛を知らずに育った3人の若者たちの青春と、“闇ビジネス”から抜け出す3日間を描く逃亡サスペンス。主演は北村匠海、共演は綾野剛、林、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏らが出演する。
韓国でも人気が高い岩井俊二監督のもとで、長年助監督として経験を積んできた永田監督は、自身のフィルモグラフィーについて「今までの作風と今回の作風がガラっと変わりました。本当に今、日本の問題を自分の中でしっかりと捉えたいという想いと、今後自分のキャリアの中でも再デビューのつもりでこの映画を作りました」と語り、師である岩井監督について「厳しく努力家の方なので、本当に人としても学ぶことが多かった」と振り返った。
出演した映画『HAPPY END』が最近韓国でも公開されたという林は、『愚か者の身分』の撮影中に印象に残った出来事について「とにかく暑かった」と笑いながら、「北村匠海さんや綾野剛さんが本当に優しくしてくださった。北村さんとは何度も食事に行き、劇中と同じような関係性を築けたことが記憶に残っています」と共演者との絆を明かした。
Netflixの「今際の国のアリス」シリーズや『幽☆遊☆白書』を手がけた森井プロデューサーは、永田監督について「アシスタントのアシスタントぐらいの時代からの仲間」と紹介。「永田さんの色を失わないよう気を付け、そこに自分のプロデューサーとしての色を融合させました」と語った。
上映後のQ&Aでは、まずワールドプレミアを迎えた感想を求められ、永田監督は「初めてたくさんのお客さんに観てもらったので緊張しました。去年の夏、とても暑い中で撮影し、ようやく今日、自分の子どもが生まれたような気持ちです」と感無量な様子だった。林も「お客さんと一緒に観られることが本当にうれしい。作品を分かち合えた感覚です」と笑顔でコメント。森井プロデューサーも「映画は観ていただくために作るもの。映画祭で同じ時間を共有できたことに感謝します」と述べた。
観客から「演じる上で難しかったことは?」と問われた林は「撮影初期はNGが多かったです。複雑な背景を背負う役に入り込みすぎて身体が硬くなり、自由に演じられず苦戦しました」と告白。「監督や匠海くんがケアしてくれて、次第に心身ともにほぐれ、自由に演じられるようになった」と感謝を口にした。
とくに北村については「演技でもプライベートでも支えてもらいました」と強調。無意識の仕草を「俺それすごい好き」とほめられたこともあったと明かし、「心が穏やかになり、助けられていると実感しました」と笑顔で振り返った。