夜ドラ『いつか、無重力の宙で』に出演する森田望智(C)NHK
NHK大阪放送局制作の夜ドラ『いつか、無重力の宙で』(総合 月~木 後10:45)で日比野ひかり役を演じる森田望智がコメントを寄せた。
【場面カット】病室で笑顔で語る飛鳥(木竜麻生)とひかり(森田望智)
高校時代「一緒に宇宙に行こう」と夢を語り合った天文部の女子4人組。30代になりそれぞれの道を歩む中、ふと忘れていたかつての夢と再会し「超小型人工衛星だったら…今の私たちでも宇宙を目指せるかもしれない…!」と2度目の青春が始まるストーリー。天文部の同級生4人を木竜麻生、森田、片山友希、伊藤万理華が演じる。
森田が演じるひかりは、いつも明るく前向きで “太陽”みたいな人。自分の「好き」を探求し、周りの空気や世間の常識に惑わされず、我が道を突き進むパワフルさがある。それ故に「変わり者」と言われることもあるが、本人は全く気にしていない。高校時代は飛鳥と一緒に天文部を立ち上げ、「宇宙飛行士になりたい」という夢をひたすらに追いかけ続けた。あることがきっかけで宇宙飛行士への夢を断念したひかりは、かつての友に会いたいと、13年ぶりに飛鳥の前に現れる…という役どころ。
■コメント
――高校生時代から変わらず宇宙を愛し続け、天文部の仲間3人と共に超小型人工衛星で再び宇宙を目指す日比野ひかりとは、どんな人物なのでしょうか。
強さと、諦めない気持ちをずっと持ち続けている人。ひかりは高校生のときから宇宙に憧れて、大学で航空宇宙学を学び、JAXAに就職したという設定ですが、並大抵の努力では叶えられなかったと思います。以前、宇宙飛行士の米田あゆさんが座右の銘にされているという「自分が歩んだ道を正しい道にする努力をしなさい」という言葉を目にしたとき、「やっぱり、そういうマインドを貫ける人しか宇宙飛行士にはなれないんだな」と痛感しました。地球から遠く離れた宇宙って、生と死の境みたいな場所ですから。ひかりは、多くの人が「普通これぐらいじゃない?」と無意識のうちに決めてしまっているラインを、全部突破できる人だと思います。
好きなものをまっすぐに「好き」と言えるのが、ひかりの強さですよね。人が何かを好きになったり、夢中になったりするときって、多少なりとも「これなら自分に合っているかも」という考えが頭をよぎると思います。でもひかりには、宇宙しかない。宇宙が好きすぎて、実現の可能性があるかどうかなんて関係なく、宇宙以外の選択肢が見えていないんです。それくらい、ひかりのなかで宇宙という存在が突出しているんですよね。「宇宙への夢がなければ生きていないのと一緒」というか。
――宇宙への夢を抱きながら、病気になってしまうひかり。大きな苦難を内に抱えながらも常に前を向こうとするひかりの複雑な内面を、どうやって表現されましたか?
私がもし病気が理由で長年の夢を諦めなくてはならないとなったら、壁にぶち当たって、落ち込むだろうなと思います。ひかりはそういう壁を打開する力がある人で、その「芯」を変わらず持ち続けるように心がけました。ひかりの強さの理由は、もともと持っている性格に加えて、病気になったからこそ生まれた感情にもあると思います。
ひかりの役作りをするときには、私が現実世界で出会った「すてきだな」と思う方々の姿を思い浮かべました。私は「乗り越えてきた人たち」に魅力を感じます。そういう人たちは、痛みを知り悲しみを負ったからこそ、人の気持ちがわかって、凛とした力強さを持っている。強さと優しさってイコールだと思うんです。ひかりはその2つが備わっている人。技術的な細かいことは考えずに、ひかりとして生きて、ひかりの強さと優しさから見え隠れする感情が伝わればいいなと思いました。
――ひかりにとって天文部の3人、飛鳥(木竜麻生)、周(片山友希)、晴子(伊藤万理華)はどんな存在ですか?
3人のことはもう「大好き」以外の言葉が出てこないんですけど(笑)、ひかりにとっても、他の3人にとっても「4人で笑い合っている空間」がとても好きだし、大事なんだろうなと思います。3人のことが大好きだからこそ心配させたくない、悲しませたくないと願うひかりがとったある行動が物語の鍵になってきます。
4人のシーンは撮影していて楽しくて、本当にそれぞれの役柄にしか見えないです。木竜麻生ちゃん、片山友希ちゃん、伊藤万理華ちゃんとは「前から友達だったかも」と思ってしまうぐらいフィーリングが合います。こんなに奇跡的にバチッとくることって、なかなかないですよ。
――ひかりにとって「大好きな3人」のなかでも13年ぶりに飛鳥の前に突然現れたひかり。なぜひかりは飛鳥に会おうと思ったのでしょうか。
もちろん、ひかりが3人とも大切に思っていることは変わらないですが、高校生のときにひかりがいちばん最初に宇宙への夢を共有できたのが、飛鳥です。「これは奇跡かも!」と思った原体験というか「光」みたいなものを、ひかりはずっと心のなかに持っていたのだと思います。それからシンプルに、何を言っても飛鳥がいちばん受け止めてくれそうだと思ったんじゃないでしょうか。これも飛鳥の人柄だからこそですよね。
――最後に、この作品の魅力を教えてください。
大人になると、いろいろと現実的な問題がでてきて、なかなか好きなことだけを追求するのが難しくなってきますよね。それでもひかり、飛鳥、周、晴子は人工衛星への夢を追い続けます。何かを始めるのに「遅い」ということはない。やろうと思えば年齢を問わず同じ純度で夢を追いかけることができる。そんな気持ちにさせてくれる作品です。私も演じながら、ひかりから「やりたいことがあるんだったら、今やらなきゃだめだよ」と言われている気がしました。
自分ひとりの頑張りだけではどうにもならないことも、みんなの力を持ち寄れば実現できることがあるし、探せばきっとそれぞれの居場所はあるはずです。このドラマが、見てくださった皆さんにとって「あ、私ちょっとこれやってみたかったかも」「これ好きだったはずだよね?」という気づきのヒントになることができればうれしいです。大きなことでなくてもいい、「小さな気持ちの選択肢」が増えたらいいなと願っています。