「第73回サン・セバスティアン国際映画祭」に参加した映画『白の花実』美絽、坂本悠花里監督
スペインで開催中の「第73回サン・セバスティアン国際映画祭」〈New Directors部門〉に正式招待された映画『白い花実』が、現地時間26日、ワールドプレミア上映を迎えた。坂本悠花里監督と主演の美絽が、フォトコールやレッドカーペット、舞台あいさつ、Q&Aなど公式行事に参加した。
【画像】「第73回サン・セバスティアン国際映画祭」で撮影されたそのほかの写真
本作は坂本監督の長編デビュー作。これまで同部門では濱口竜介監督やジョナサン・グレイザー監督(『関心領域』)ら、後に飛躍を遂げた監督たちの作品が上映されており、登竜門として知られている。
物語は、転校を繰り返す少女・杏菜が寄宿学校で出会った完璧な少女・莉花の突然の自死から始まる。残された日記には苦悩や怒り、言葉にできなかった秘密が記されており、やがて“鬼火”のような魂が現れ、杏菜を思わぬ行動へと導いていく――。
当日は約600人が来場し、上映後にはスタンディングオベーションが起こり、「ブラボー!」の声も飛んだ。
Q&Aでは、「自殺をテーマに扱っていますが、なぜ現実と少しかけ離れているフィクションのような雰囲気で描いたか?」という質問に、坂本監督は「閉鎖的な女子校という特殊な環境に置くことで、女性が求められがちな役割から解き放たれ、女性本来の感情を浮かび上がらせたかった」と演出意図を説明。
自殺のテーマについては「インスピレーションとして急に降りてきましたが、後から思えば、ティーン時代に自分も同じことを考えていた。日本で若年層の自殺が増えている現実がある中で、このテーマで書こうと決心しました」と語った。
「自殺は決して良いことではないと思います」としつつ、「周りの人が自殺の理由を決めつけるというのは違うのではないかと思っています。日本では、『こういう理由で自殺したのではないか』とか、『こういう環境だったからなのではないか』など、ゴシップとして取り扱われているのを見るとすごくいら立ちのようなものが湧く」と作品に込めた思いを明かした。
今回、映画初出演にして初主演、そして初めての舞台あいさつとなった美絽は「初めての長編映画で、緊張や不安を強く感じていたのですが、この作品は自殺などがテーマだったので、やはりそういう気持ちはきっと誰しもが感じたことがあるんじゃないかと思っています。“その気持ちはあなただけじゃなくて、他のみんなも感じているから安心してほしいな”と思ってます」と作品に参加した想いを話した。
最後に、本作で描かれている親と子の対立について、坂本監督は「家庭の問題は孤立しやすく、それぞれの家庭内で何が起こってるのかは、結局誰にもわからないということが多いと思っています。大人も子どもも互いに相談しづらいなかで、大人が子どもに『勉強しなさい』とか、『受験のために頑張りなさい』などというプレッシャーを強く与えてしまうような、“勝てない問題”のようなもの描きたかった」と締めくくった。
現地で鑑賞した観客からは、「映画を見て連想する作品はあるけど、新しい映画でとても面白かった」「友情や孤独の意味を青春という文脈の中で問いかける、感情に響く探究となることを約束している作品」「泣きたくなるほど美しい!」といった感想が寄せられた。
映画『白い花実』は12月26日より全国順次公開予定。