ドキュメンタリー映画『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』日本公開決定 (C)2024 BNU PRODUCTIONS LLC ALL RIGHTS RESERVED.
イスラエル本国で上映が禁止され、ベンヤミン・ネタニヤフ首相自らが公開中止を求めて訴訟を起こそうとしたドキュメンタリー映画『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』が、11月8日より東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかで公開される。このたび、劇中の本編映像と場面写真が解禁された。
【動画】ドキュメンタリー『ネタニヤフ調書 汚職と戦争』本編映像、予告映像
2023年10月7日、ハマスによるイスラエル攻撃をきっかけに、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃を開始。長期化するガザ・イスラエル紛争で、国際社会から批判と注目を集める中、焦点となっているのがイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフだ。
強硬な政治姿勢で知られる一方、彼が在任中に刑事起訴された“史上初のイスラエル首相”であることを国外で知る人は少ない。
2017年、ネタニヤフ首相に対する汚職捜査の過程で、秘密裏に制作チームにリークされた警察の未公開尋問映像が存在した。その映像には、メディアとの癒着や財界からの収賄、利益供与の実態が記録されており、本作はその映像を中心に、権力と腐敗の実態を克明に描き出す。
製作総指揮を務めたのは、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した『「闇」へ』(2007年)や同賞ノミネートの『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』(06年)などで知られるアレックス・ギブニー。米エスクァイア誌で「現代で最も重要なドキュメンタリー作家のひとり」と評される。
監督は、ユダヤ人の父とドイツ人の母の間に生まれたアレクシス・ブルーム。ネタニヤフが有罪回避のために極右勢力と結託し、長期政権のもとでイスラエルを分断し、民主主義を危機にさらしていった過程を追う。
今回公開された本編映像では、2006年から2009年までイスラエル首相を務めたエフード・オルメルト氏が登場。「彼はシステムを破壊しようとする。“私は特別だ。誰も手出しできない。手を出せば陰謀だ”と語るのだ」と、ネタニヤフ首相を痛烈に批判する。
あわせて公開された場面写真には、ネタニヤフ首相とサラ夫人の警察尋問の様子、さらに証言者として登場するイスラエル元首相、元シンベト長官、ネタニヤフの元選挙参謀、子ども時代の友人、元官邸ハウスキーパーたち。
製作総指揮を務めたアレックス・ギブニーは、「本作の出演者は全員イスラエル人で、1人を除いて全員ユダヤ人です。彼らはネタニヤフに批判的で、世論調査によればイスラエル国民の70%も同様です。ネタニヤフはイスラエルと地域の安全保障を著しく損なってきました。ネタニヤフ批判を反ユダヤ主義と結びつけてはいけません。彼はユダヤ教でもイスラエルそのものでもないのです」と語っている。
イスラエル国内での上映禁止措置を受けながらも、「第97回アカデミー賞」長編ドキュメンタリー部門でショートリスト選出された本作。「人間はなぜ権力に弱いのか」という普遍的なテーマのもと、権力者の“力への欲望”を白日の下に曝け出す問題作となっている。