『すべて真夜中の恋人たち』映画化
作家・川上未映子による小説『すべて真夜中の恋人たち』(講談社文庫)が、監督に岨手由貴子、主演に岸井ゆきの、共演に浅野忠信を迎えて映画化され、来年(2026年)公開予定であることが発表された。あわせてキャスト・監督・原作者からのコメントも到着している。
【画像】『すべて真夜中の恋人たち』原作書影
2008年『乳と卵』で芥川賞、2019年『夏物語』で毎日出版文化賞を受賞し、世界40以上の国・地域で著作が刊行されるなど、国内外で高い評価を受ける川上未映子。本作は2011年に刊行された初の恋愛小説で、発行から13年を経た今も読者からの支持が根強い。国内累計発行部数は40万部を突破し、全米批評家協会賞小説部門では日本人として初のノミネート。さらに米・TIME誌が選ぶ「2022年の必読書100冊」にも選出された。川上作品の中でも、最も多くの人の共感を集めてきた恋愛小説が、初の長編映画化を果たす。
◆岨手由貴子監督が5年ぶりに長編映画を手がける
メガホンをとるのは、『あのこは貴族』(2021年)で現代女性の生き方を繊細に描き、国内外で高く評価された岨手由貴子監督。約5年ぶりとなる長編映画で、女性の心の機微を細やかにすくい取るその演出力が、川上文学の緻密な心理描写と響き合う。
物語は、人との関わりを避け、孤独に生きてきたフリーの校閲者・入江冬子が、年上の物理教師・三束と出会い、初めて他者と心を通わせていく姿を描く。真夜中の静寂と人の温もりが交錯する、岨手監督ならではの抑制と情感に満ちた恋愛ドラマとなる。
◆岸井ゆきの×浅野忠信 初共演で紡ぐ“孤独と再生”の物語
主人公・入江冬子を演じるのは、『ケイコ 目を澄ませて』(22年/三宅唱監督)で第46回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ、各映画賞を席巻した岸井ゆきの。原作の愛読者でもあったという岸井は、冬子という人物を「人と関わることを怖れながらも、心の奥では誰かを求めている存在」として、繊細に演じる。
冬子と出会い、静かな交流を重ねる物理教師・三束役には、世界的俳優・浅野忠信。『SHOGUN 将軍』(24年)で第82回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞するなど、国際的に活躍を続ける浅野と岸井の初共演が実現した。
■岸井ゆきののコメント
川上未映子さんの小説が大好きで、様々な媒体でお話しさせていただくほどでした。
『すべて真夜中の恋人たち』は、私の中であまりにも完成されていて、映画になることもその主人公を担うのも不安が大きく難しいと感じましたが、この物語が映像として立ち上がるとき、冬子として立っていたいと思いました。
大好きな原作の文字のイメージから抜け出すのには試行錯誤しましたが、目の前にいる監督やスタッフと今そこに在るものを信じて、16ミリフィルムに閉じ込めることが出来ました。
原作を愛するすべてのみなさまにもう一度冬子に出会っていただきたく、まだ冬子を知らないみなさまには、この世界を知ってほしいです。
■浅野忠信のコメント
『すべての真夜中の恋人たち』公開決定!とてもうれしいです!
三束さんという役を演じるにあたり、彼の秘密をとことん考えました。
しかしこの役をより確かなものにできたのは岸井ゆきのさんが演じる入江冬子さんがいたからです。
そして岨手由貴子監督に自分の作った三束さんを理解していただき共にフィルム撮影できる事でより深く作品を表現できたと思っています。
■監督・脚本:岨手由貴子のコメント
はじめて原作小説を読んだときのこと、岸井さんや浅野さんにお会いしたときのこと、ロケハン中や夜の会議室であれこれ構想したこと。そんなひとつひとつの断片が確かな線を結んで、ようやく一本の映画が完成しました。
映画をつくるたびに感じるのですが、企画段階から完成に至るまでに交わされたあらゆる会話が、いつも重要な気づきを与えてくれて、どこへ向かうべきかの道しるべになってくれます。
この素晴らしい原作に魅せられたスタッフ、キャストとの出合いが、映画『すべて真夜中の恋人たち』をつくりあげました。
公開までまだ少しありますが、多くの方に観てほしいし、この物語について話してほしい。
その日が待ち遠しくて仕方がありません。
■原作:川上未映子
世界中の読者から、この作品への心のこもった感想を受けとるたびに、まるで青白い炎にふれているような気持ちになります。岨手監督によって、そして岸井ゆきのさん、浅野忠信さんが演じる冬子と三束さんによって、その静かな熱はさらに濃く深くなり、文章では見ることのできなかった、知ることのできなかった、たくさんの感情や記憶に出会いました。みなさんに観ていただける日が今から楽しみでなりません。