【インフルエンザ】NGな市販薬は? 予防接種の時期は? 若くても注意したい重症化リスク「脳炎など重症化を引きこす方も」医師が警鐘

2025/10/24 09:00
市販薬飲んでもOK? 予防接種はいつが最適?
市販薬飲んでもOK? 予防接種はいつが最適?
 今年はインフルエンザの流行が例年よりも早く、厚生労働省は10月3日、全国的に流行シーズンに入ったと発表。昨年も例年より早く11月8日に流行入りしていたが、今年はさらに1ヵ月ほど前倒しとなった。気になる重症化リスクやワクチンを打つタイミングなど、クリニックフォア・総合内科の井上隆博先生に聞いた。

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■今年のインフルエンザ症状の傾向は? コロナとの違いも

──今年はインフルエンザの流行が例年より早いと報じられていますが、なぜ時期が早くなったのでしょう?

  「海外からの渡航者の増加により、インフルエンザウイルスが持ち込まれる機会が増えていることが考えられます。実際に、自国で感染して来日後に発熱するケースもあります。加えて、夏休みや連休で人の移動が増えたことや、大規模なイベントで人が集まる機会が多かったことも影響しているとみられます。結果として、夏休み明け早々にインフルエンザによる学級閉鎖など小規模の流行が起こり、ワクチン接種前ということもあり、流行の立ち上がりが早くなったと考えられます」

──毎年A型やB型など複数の型が見られますが、今年の流行の傾向は?

 「今年の流行の傾向は、例年と同様のパターンが予想されます。例年、まず季節性のA型・H1N1が流行し、続いてA型・H3N2、いわゆる香港型が流行します。さらに年末~翌年2月ごろにかけてB型へと移っていく――というパターンです」

──それぞれどんな症状が出るのでしょう?

 「A型・H1N1は、急な高熱、強い倦怠感、関節や筋肉痛といった全身症状が急に出る方が多い印象です。シーズン後半に流行するB型では、高熱より吐き気、お腹のムカつきなどの消化器症状を訴えるケースが目立ちます。これらの症状についても、例年と大きな違いはありません」

──現在、新型コロナウイルス感染症も一部で流行していますが、インフルエンザとの症状の違いは?

  「今年流行しているコロナの変異株のニンバスは、喉の強い痛みが特徴です。“カミソリを飲み込んだような強い喉の痛み”を感じる方もいらっしゃいますが、熱はそれほど高くならない方が多いです。一方インフルエンザの症状は、38度以上の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが急激に現われ、咳、鼻水などの症状がこれに続いて見られることが特徴です」

──熱が出たらまず解熱剤などの市販薬を使いがちですが、それではインフルエンザは治らないですよね?

 「インフルエンザを含む風邪(ウイルス性上気道炎)は、多くの場合はお薬を使わなくても5日前後で症状が改善することが期待できます。解熱剤や鎮痛剤などで一時的に症状が軽くなるように対処しながら過ごすのも一つの選択肢ですが、インフルエンザの場合は、発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用することで、発熱期間や全身症状の持続時間をおよそ1日(24時間)前後短縮できると報告されています。このため、自己判断で市販薬だけに頼るのではなく、早めに医療機関を受診することが大切です」

――インフルエンザの可能性がある場合、市販薬を使う際に気を付けるべきことは?

 「インフルエンザの時にロキソニン(ロキソプロフェン)などの非ステロイド性抗炎症薬を使用すると、まれにインフルエンザ脳症の発症リスクが高まる可能性が指摘されています。疑わしい場合は、アセトアミノフェン系の解熱剤を使用するか、医師の指示に従いましょう」

――インフルエンザかどうか、自分でわからない場合は?

 「判断に迷ったときや、すぐに病院に行けない方は、まずオンライン診療で医師に相談して、検査や対面診療が必要かどうか判断してもらうといいと思います。ただし、症状が長く続く(5日以上)場合、呼吸が苦しい、強い倦怠感がある、意識がもうろうとする…など重い症状の場合は、すぐに対面で医師の診察を受けることをおすすめします」

■若年層にも重症化の可能性あり、「若いから大丈夫」と過信は禁物

──インフルエンザに感染後、重症化を防ぐために注意すべきことはありますか?

 「感染症と体が戦っている間に免疫や防御力が落ち、また別の感染症をもらってしまうことは十分あり得ます。重症化するとウイルス性肺炎や細菌性肺炎、稀ではありますが意識障害やけいれんなどのリスクがあるので、治りかけに無理をしないことが大事です。また、若年層の方でも、『若いし体力があるから大丈夫』『寝ていれば治る』と、軽く捉えてしまい、結果として脳炎など重症化を引きこす方もいらっしゃいますので、回復期に無理をせず、十分な静養をとることが重要です」

──若者が重症化するケースもあるんですね。

 「免疫反応が強く出すぎて、稀に肺や脳などにダメージを与えることがあるのです。以前のコロナ重症例でも見られた現象で、ウイルス感染症では稀に免疫の“暴走”が起き、呼吸苦や全身の炎症につながることがあります。時間が経っても症状が落ち着かなかったり、息苦しさが強まったりする場合は、一度医療機関で相談してみるとよいでしょう」

──若者以外の方の重症化リスクは?

 「高齢者や基礎疾患のある方、免疫抑制治療中の方などは重症化しやすく、医療機関での早期受診と十分な休養、症状に応じた処方薬を用いた治療が重症化予防の鍵になります。発熱や脱水が持病の悪化につながるおそれもあるので、注意してください」

──感染予防として、インフルエンザワクチンを接種する方も多いと思いますが、どのくらい効果がありますか?

 「ワクチンの効果期間は、だいたい5~6ヵ月といわれています。一度打っておけば、1シーズンは効果があると考えてよいでしょう。いま接種しておけば、例年のピーク帯である2~3月まで効果が続く見込みです」

──では、ワクチンを接種するなら今?

 「そうですね。ただ、ワクチン接種後に体内で免疫を獲得するまでに約2週間かかります。そのため、流行が本格化してから慌てて打つよりも、増え始めるタイミングで接種した方が、流行ピークに最大の防御効果を発揮できます。今年は流行が前倒しになっている分、対策も前倒しするのが合理的。毎年流行してからワクチンを打つのが習慣になっている方は、いつもより2週間程度早い接種がおすすめです」

──普段の生活で気を付けるべきことは?

 「手洗い、うがい、マスクの使用は基本です。ほかにも、室内の換気と適度な加湿(乾燥対策)を意識してください。また、十分な睡眠とバランスの良い食事、そして寒暖差対策をして“体調の谷”を作らないことが予防につながります。人が密集・滞留しやすい環境、帰省や旅行後は体調の変化に注意し、家族が感染した際には共有物の消毒など、家庭内感染の対策も忘れないことです。そして何より、発熱があれば早い段階で医師の診察を受けることが重要です。抗インフルエンザ薬が最も効くタイミングを逃さないことが重症化予防の要です」

【監修】
井上隆博
慶應義塾大学医学部を卒業後、さいたま市立病院にて初期臨床研修を修了。その後、慶應義塾大学病院 血液内科に入局し、専攻医として専門的な診療・研究に従事し、日本内科学会認定内科専門医および日本血液学会認定血液専門医を取得。大学病院での高度医療に携わる中で、より身近な医療を提供したいという思いからプライマリケアに関心を持つようになり、現在はクリニックフォアにて総合内科および皮膚科の診療を中心にプライマリケア診療を担当している。

(文:衣輪晋一)

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