初共演で信頼感たっぷりに語り合った(左から)向井康二、森崎ウィン 撮影:山崎美蔓(※崎=たつさき)(C)ORICON NewS inc.
俳優の森崎ウィンとSnow Man・向井康二が、日タイ共同制作のオリジナル映画『(LOVE SONG)』(10月31日公開)でW主演を務める。東京とタイ・バンコクを舞台に、異国の地で再会し次第に心を通わせていく過程を温かな視点でユーモラスに描く本作で、切ない両片想いを演じた2人にインタビュー。
【写真】やさしく目を合わせ笑い合う森崎ウィン、向井康二
突然の辞令で東京から海外勤務を命じられた研究員・ソウタを森崎、ソウタがバンコクで再会するカイを向井が演じる。初共演とは思えない自然な空気感の裏には、作品を通じて育まれた深い信頼と絆があった。互いの芝居に惹かれ合い、支え合いながらつくりあげた“化学反応”の瞬間、そして役を超えて感じた“愛”について、笑いあり、真剣ありのトークから本音を聞いた。
■自然に生まれた「ふたりの呼吸」
取材の席についた瞬間から、向井が軽やかなボケで笑いを誘い、森崎がすかさずツッコミを入れる。そんなやりとりからも伝わる、息の合った空気感。撮影現場でも、言葉にしなくても通じ合う瞬間が幾度となくあったという。お互いの存在が自然と芝居を導いた、印象的なシーンについて語り合う。
――おふたりのやりとりで、化学変化が起きたと思った瞬間はありましたか?
森崎:僕は2人で歩いて行くところかな。
向井:ここ?(両手の人差し指を並べて)
森崎:そう。このシーンの何が1番“うわっ!”て思ったかっていうと、歩き出した後に2人で肩抱き合って。あれは多分、僕らがこの作品で一緒に作り上げてきて培ったものがその歩きに全て出てた気がして。2人の関係性がキャラクターとして自然と出た。お芝居で一緒にやってきたからこそ、その瞬間を迎えられたのかなって思います。「こうしよう」「ああしよう」っていう言葉を交わすことなく、自然と台本を超えたものができたんじゃないかな。
向井:たしかに。まだ歩けたんだよね。まだ道は続いてたんで、正直歩けたね。
森崎:歩けたけど、雨降るかもしれないから、「はい、終わり」みたいな。
向井:日もギリギリで、みたいなね(笑)。そこもそうだけど、僕は、(ライブシーンで)歌ってるときは(森崎演じる)ソウタがいるのを見てから歌えたこともある。あれはいないと歌えなかったと思う。
森崎:こうちゃんの歌自体ももちろんなんですけど、歌の前に(向井演じる)カイがMCみたいなことをするんですよ。正直ライブを見に行って、1番後ろの列で遅れて入ってきてるので、皆さんが映画館のスクリーンで見てるほどのアップのカイの表情って、ソウタからは見えないんです。モニターも見てなかったんですけど、それよりも、その前の彼の声とかしゃべるトーンとかで、すごい伝わるものがあったので、そのときはまさか自分のこととは思ってなかったから、なんか切なかったですね。
向井:響いてなかったみたいです、ソウタに。
森崎:そういう意味ではすれ違ってたんだね。ああ、もどかしい。
向井:もどかしい映画ですね。ずっともどかしいです。
■キャラクターと素顔が交わる瞬間
物語の中心を担うソウタとカイ。まっすぐでピュアなソウタと、クールでストイックなカイを、それぞれどう捉え、どう演じたのか。役を通して見えてきたお互いの素顔や、俳優としての集中力、現場で感じた信頼の瞬間を語る。
――おふたりが演じられたソウタとカイ、それぞれのキャラクターの魅力や、お互いを見て、実際役と本人が似てるなって思う部分はありますか。
向井:どう?ソウタは全然違うよね。
森崎:違うかもなぁ。
向井:そうだよね。ああいう役も初めてぐらいだよね。
森崎:初めてぐらいだね。やってて自分でちょっとソワソワするもん(笑)。
向井:でも見てる分には大丈夫なんですよ。やっぱり自分じゃないからそわそわする。
森崎:こうちゃんは、無口な人でもないし、すごいコミュニケーション能力の高い人だから、カイとはまたちょっと違うとは思うんですけど、例えばカイが何かに打ち込んでる…カメラだったりとか、音楽に打ち込んでる瞬間の集中力。向井康二がカイを演じるために、現場でそのワンカットにかける集中に入った瞬間が、カイが自分の好きなものに入っていく集中力とちょっと似てるなって。そこは“あ、こうちゃんの集中の仕方ってこういうことなんだな”って垣間見れる感じがして、あの“キュッ”とした瞬間がすごく好きです。
向井:ありがとうございます(照れつつ頭を下げる)。映画やとさ、ソウタはカイのことやったらカイじゃん。仕事中もカイじゃん。普段は?「この仕事してたらこれ」って感じ?
森崎:いや、“これ”って感じではあるんだけど、結局同時進行でいろいろやらなきゃいけない瞬間もあるじゃない。
向井:ソウタは1つのことに夢中になっちゃうけど、やっぱりいろんな仕事してるから、そこは違うところかもしれないね。
――ソウタってかわいい子ですよね。
向井:そうだね。
森崎:かわいいですよね。
向井:自分で言うな!
森崎:脚本を読んだときにできないって思ったんですよ。
向井:きゅるきゅるだもんなー。
――言動すべてがかわいい。
向井:かわいいよね。
森崎:そうなんです。僕からそんなの生まれてくるとは思えないから。
向井:生まれてましたよ。
森崎:どう演じようって思って、いやぁ~…って思ったけど、本読みでカイがドンッていてくれたから、「あ、僕飛び込んでいいんだ!ちょっと甘えるね」って思って(笑)。
向井:逆にカイはああいうふうにしかできない。
森崎:でもさ、カイがめっちゃ難しいのが、表情とちょっとした動きとかで言葉数が少ないキャラクターだから、スローとかも多いし、目線とか目の奥とかがすごく大事になってくるわけじゃないですか。
向井:(指をパチンと鳴らしながら)難しい。
森崎:表現力はすごい豊かだけど、僕はアップでは見れないから、その姿とか、隣にいるときの歩き方とかでめっちゃビシビシ受け取るんですよ。だから2人で久々に出会って、一緒に歩いてふぁって去っていく背中とか、そういうものからもらえるものがたくさんあって。普段あんな歩き方絶対しないからこうちゃん(笑)。あと声。たまにしゃべるときの声のトーンとかすごい大事になってくる。そこで“飛び込めるな”っていう安心感をくれるから、飛び込めました。
向井:お互いさまです。はぁー…んっ!(何かを掴んで引き寄せるジェスチャー)
森崎:受け取った(笑)。
■信頼が生んだ絆と「愛」
初共演ながら、現場で深い信頼を築いた2人。互いを尊重し、支え合いながら作品を完成させていった裏側には、真摯な対話と“愛”があった。
――おふたりは初共演ということで、仲を深めたきっかけであったり、お互いに相談したことなどがあったら教えてください。
森崎:特別、「これをやって仲良くなりました!」とか「ババ抜きをやって、そっから仲良くなりました!」とか、昔のヤンキーみたいな「1回殴り合ったらマブダチだ!」みたいなのもないです(笑)。
向井:例えが古いな!
森崎:多分、似てるところは、お互いいろいろな物事にはっきりと思ってることがありながらも、周りをめっちゃ見てるんですよ。人のことをパッて見て“この人今こうだな”と思ったらスッて(近くに)入れたりとか、お互いがお互いを見てないようで、見てるんですよね。「すごいな」と思ったのが、僕がバッてなってる(集中している)とき、一切来ないんですよ、こっちに。あんな明るく現場でやってるのに、そういうときは終わった後に「ウィンくんー!」って(笑)
向井:でもたまに間違えるときある。「ウィンくんあのさ!…あ、やべっ」て(笑)。
森崎:あっはっは!でも、スッ…ていなくなるんですよ。あれって多分相当アンテナが広くないとできない。無神経にやってるわけじゃない。自分のことでもやらなきゃいけないことはたくさんあるのにちゃんと見れているのを、僕もこうちゃんほどではないけど周りを見るから、そのすごさを感じるんですよね。“こうちゃん、このシーンもうちょっとこうしたいのかな”とか思って、「どう思う?」って聞いて、案の定思っていることがあったりとかして。2人で話し合って、そのシーンについて「ちょっと言いに行こう」ってときに、ちゃんと先頭立ってくれたりとか、なんかいいバランスで関係性を築けました。
向井:ずっと話してなくてもいいもん、ぶっちゃけ。無言でもいいし。大体、現場でどこにいるかっていうのは把握してるから。“あっちおるな”みたいな。
――2人で言いに行ったというのは、監督に、ですか?
森崎:そうです。ソウタがカイの家に1泊して、帰ろうとしたら雨降ってきて、朝飯食っていきなみたいになって、カイが“カイチアウ”(溶き卵を油で揚げたタイ料理)を作ってるシーンで、上裸の背中が見えて…。ちょっと、“はぁー…(うっとり)”って思いながら背中を見てたんですけど。そのときも、最初はちょっと時間的にもいろいろ厳しくて、別の場所で撮っちゃおうってなったんですけど、「いや、それだったらもう前後のシーンは撮っちゃってるから、これ繋がんないよね」みたいになって。「ウィンくんどう思います?」「僕もそれ思ってて」「ちょっと言ってみません?」「じゃあ行く?」「でもこれスケジュール的にもリスケになるよね」みたいな。もう絶対時間取れないんで。
向井:でも撮り直してよかったよね。
森崎:絶対によかった。
向井:気持ちよくなかったの、演じていて。僕はカイとしてはできんのよ。ただ、僕の顔見てあのせりふ出ないなって。
森崎:ソウタのことも考えてくれて、カイが背中になったことで顔が完璧に見えないから、カイが強がって言ってる声のトーンしか聞こえない。だから「あぁ」ってさらっといけたけど、それを実は、向き合ってやっちゃおうってなってたんですよ。
向井:変わるよね。すれ違いがいいもんね。
森崎:そう。段取りやったとき、そのシーンだけ“なんかはまんないな”って思って。でも難しいのが、俳優のエゴになっちゃいけないなってのは僕の中にあって、“僕はこれができないから無理”ってやっちゃうと、もうそこで全部が終わってしまうから。でもあれは違ったんですよ。
向井:あれは“愛”です。
森崎:愛だったね。
向井:映画に対しての愛。だって、できるけど、ちょっとモヤモヤした感情でやってもね。顔に出ちゃうから。人だし。相談はね、無料なんで。
森崎:たしかにそうだね。無料相談だ。
向井:じゃあ、やらせていただきます。0120…。
森崎:あはは!
――ソウタとカイは“両片想い”という関係ですけど、お2人それぞれご自身として見て、この2人の関係をどんなふうに思いますか?もし自分が友達だったら、2人にどんな声をかけてあげるでしょうか。
向井:僕はもう放置してるかもな…。なんかもう、くっつくやん、みたいな。ちょっと背中押せばいけそうやんな。でも押し具合がむずいよね。やっても、少し助言するぐらい?
森崎:でもさ、ちょっとめんどくさいなって思う(笑)。行くなら行けよ!
向井:もうええて、行ったらええやん、みたいなのはあるよね。まあ、新しい言葉を作るなら“ハピイラ”?「ハッピーでもイライラ」。
森崎:ハピイラ!いいね。
向井:イライラ100パーじゃないですよ。“うぅー!イライラするぅ!”っていうのがあるじゃない。恋愛リアリティーショーとか見てても、“イライラするなぁー”みたいな感じになるけど、でも楽しいっていう。
――2人とも積極的に介入していくタイプではないですか?
向井:あんまり100%は入らないかもしれないですね、僕は。
森崎:僕も入らないです。その渦中にいる人って意外と周りが見えなかったりするじゃないですか。外から見て「このろうそくの火、触ったら熱いよ」って言っても、多分耳に入らないと思うんですよ。だから、「あ、どうぞとことん触ってください」っていって、火傷させる方がいいかなと思うから、入ってもしょうがないのかなって。入っても入りきれないんじゃないかなと思うんですよね。ちょっと例えが強いですが(笑)。
向井:僕の人生じゃないんでね。
森崎:あはは!僕もそれ思ってたんだけど、ちょっと冷たすぎるかなと思って言わなかった(笑)。
向井:相談されたらいいけど、相談されてない人に対しては行かないかもしれない。来たら全部乗るけど、別に何も言われてないものに対してクッて踏み込んでいくのは違う気がしますね。
――ちなみにおふたりは、ソウタとカイみたいに思いを自分の中に抱えちゃう方か、ワタル(演:藤原大祐)みたいにちゃんと1回は伝えた方がいいと思うタイプか、どちらですか?
向井:最近はすぐ伝えます。何があっても、感情を、思ってることをすぐ言う。そうしないと伝わらないですよ。
―ーそれは経験からですか?
向井:経験からですね。今ちょっと楽しいなってときも「ちょっと楽しい」って言うとか、「ちょっと今イライラしてます」とかも全部言います。その方が自分的には楽だしね。伝わるし。わがままにはならないようにはしてますけど。
森崎:僕は、感情は言う相手を決めてるかもしれないですね。マイナスなことに関しては特に、口に出すタイミングは選ぶかもしれないです。ただ、プラスなことはこうちゃんみたいに、楽しいときは「楽しい」って言います。その言葉で変わる瞬間がたくさんあるから。マイナスなことは、すごい溜め込んでるってわけでもないですし、どっかのタイミングで絶対言おうって思ってます。僕の性格上、ワッて言って言葉が多くなりすぎて失敗したことが結構多かったんです。だから1回飲み込んで、順序立てて、なんで僕はイライラしてるのかを考えます。
――チャンプ監督が「強い愛には引力がある」とおっしゃっていますが、2人がお互いにどうしても引き寄せられるなっていう魅力を教えてください。
向井:“真面目さ”じゃないですか。真面目すぎるとおもしろくないけど、ウィンくんはユーモアもある。真面目すぎても、ちょっとなんか息苦しい。“なんか僕不真面目みたいやん”って。でもね、そういうことじゃなくて、ちゃんと愛がある。隣にいて気持ちいいですね。
森崎:僕は、先ほどお伝えした「撮り直しましょう」って言って、終わった後に移動車に2人で乗ったときにこうちゃんが「いや、いいんです。これでいいんですよ、ウィンくん」「だって僕はモヤモヤするし」って言ったんです。やっぱり現場が1回止まるし、リスケって大変なことじゃないですか。しかも海外ロケでっていうことを踏み切ろうとした瞬間でもあるから、あのときにこの人は終わってからも自分を見つめ直す瞬間をちゃんと作る人なんだなって、それがすごく魅力的に僕には映りました。トップアイドルで、いろんなとこウワァー!って行って、多分そんな時間もないと勝手に思ってたのが、そうじゃなくて、ちゃんと自分の芯となるところに帰って、そこでもう1回揉んで、いや、これで合ってる、とかということをやってるんだなと思うと、すごく人間味を感じたし、すごい魅力的だなって。そこがすごくまた惹きつけられました。
ヘアメイク
森崎:宇田川恵司
向井:宮本春花
スタイリスト
森崎:森田晃嘉
向井:三浦玄
【向井康二 衣装】
●ジャケット+ボトムス
ブランド名:IRENISA(イレニサ)
問い合わせ先名:IRENISA(イレニサ)
●シャツ
ブランド名:ANTHEM A(アンセム▲エー)
問い合わせ先名:ENKEL(エンケル)
●ネックレス&ブレスレット&小指のリング
ブランド名:mollive(モリーブ)
●人差し指のリング
ブランド名:Atease(アティース)
問い合わせ先共に:CharcoalGreenTokyo(チャコールグリーントーキョー)